国際問題 外交問題 国際政治|e-論壇「百花斉放」
ホーム  新規投稿 
検索 
お問合わせ 
2015-03-18 10:10

(連載2)沖縄の「独立」をめぐって:沖縄と主権問題

袴田 茂樹  日本国際フォーラム評議員
 沖縄の多くの人たちが、これまでの、あるいは今日の日本政府の政策に強い不満を抱いている、そしてその不満の気持ちが「主権回復」とか「沖縄独立」といった形で表現されているのだろう、と理解することは出来る。しかし、現在の動乱状態とも言うべき世界情勢や緊張した日中関係を考えると、ここに紹介した沖縄の新聞論調や彼らが組織したフォーラムの政治傾向は、あまりにも無責任と言えないか。

 近年日中間では尖閣諸島問題が先鋭化し、中国国内ではそれがさらにエスカレートして「琉球は歴史的に日本領ではない」とか、「琉球は中国朝貢国だった」という言説が流布している。日中間の今日の尖閣をめぐる紛争が、将来、日中間の「沖縄問題」にエスカレートする可能性はまったく無いと言い切れるだろうか。主権問題に対する現地紙やそれが主催するフォーラムの立場は、中国国内の「琉球は日本領ではない」「琉球は歴史的に中国領」といった主張を大いにエンカレッジするものだ。その意味で、あまりにも無責任であると私は言いたいのである。

 ちなみに、スコットランドにおける住民投票は、英国政府が認めたものであり、それゆえにその自決権は国際法上有効とされる。その意味では、政府が認めていないスペインのカタルニアやウクライナのクリミアの独立を問う住民投票は、国際法上の合法性は有しておらず、スコットランドのケースとはまったく性格を異にするものだ。世界の大都市にある中国系住民の多い「チャイナタウン」で、民主的に住民投票をしてその町の独立や中国への併合を決めても、国際法的に合法性は得られない。沖縄の人たちと話しても、国家主権をめぐるこのようなポイントを明確に理解している人は少ないように思えた。

 沖縄の米軍基地の問題にしても、日本政府は沖縄県民の気持ちや生活に、またこれまでの歴史に最大限の配慮をすべきだとしても、最終的な決定権は沖縄県や嘉手納市にあるのではなく、あくまで日本政府にある。それは、国の安全保障に責任を負うのは日本政府であり、それは国家主権の問題だからである。主権国家の中に「主権を有する地域」が存在するというのは、原理的にあり得ない。その意味では、主権国家内における「地域主権」という概念も、政治学的にはナンセンスである。もちろん、「地方自治」という概念は重要であり、その拡大や充実は、主権問題とは次元の異なる問題なのである。(おわり)
お名前は本名、またはそれに準ずる自然な呼称の筆名での記載をお願いします。
下記の例を参考にして、なるべく具体的に(固有名詞歓迎)お書き下さい。
(例)会社員、公務員、自営業、団体役員、会社役員、大学教授、高校教員、大学生、医師、主婦、農業、無職 等
メールアドレスは公開されません。
ただし、各投稿者の投稿履歴は投稿時のメールアドレスにより抽出されます。
投稿記事を修正・削除する場合、本人確認のため必要となります。半角10文字以内でご記入下さい。
e-論壇投稿の際の注意事項

1.投稿はいったん管理者の元へ送信され、その確認を経てから掲載されます。
なお、管理者の判断によっては、掲載するe-論壇を『百花斉放』から他のe-論壇『議論百出』または『百家争鳴』のいずれかに振り替えることがありますので、予めご了承ください。

2.投稿された文章は、編集上の都合により、その趣旨を変えない範囲内で、改行や加除修正などの一定の編集ないし修正を施すことがありますので、予めご了承ください。

3.なお、下記に該当する投稿は、掲載をお断りすることがありますので、予めご了承ください。

(1)公序良俗に反する内容の投稿
(2)名誉や社会的信用を毀損するなど、他人に不快感や精神的な損害を与える投稿
(3)他人の知的所有権を侵害する投稿
(4)宣伝や広告に関する投稿
(5)議論を裏付ける根拠がはっきりせず、あるいは論旨が不明である投稿
(6)実質的に同工異曲の投稿が繰り返し投稿される場合
(7)管理者が掲載を不適切と判断するその他の理由のある投稿


4.なお、いったん投稿され、掲載された原稿の撤回(全部削除) は、原則として認めません。
とくに、他人のレスポンス投稿が付いたものは、以後部分的であるか、全部的であるかを問わず、いかなる削除も、修正もいっさい認めません。ただし、部分的な修正については、それを必要とする事情に特別の理由があると編集部で認定される場合は、この限りでありません。

5.投稿者は、投稿された内容及びこれに含まれる知的財産権(著作権法第21条ないし第28条に規定される権利を含む)およびその他の権利(第三者に対して再許諾する権利を含む)につき、それらをe-論壇運営者に対し無償で譲渡することを承諾し、e-論壇運営者あるいはその指定する者に対して、著作者人格権を行使しないことを承諾するものとします。

6.投稿者は、投稿された内容をその後他所において発表する場合は、その内容の出所が当e-論壇であることを明記してください。

 注意事項に同意して、投稿する
記事一覧へ戻る
公益財団法人日本国際フォーラム