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2015-03-14 00:50

(連載2)プーチン大統領は核大国の責任を果たす気があるのか?

河村  洋  外交評論家
 プーチン大統領はロシアの力を誇示したいがために核の脅威を増幅しているだけで、国際安全保障での責任ある当事者として振る舞う気などないように思われる。ロシアの先制攻撃ドクトリンとヨーロッパの海空での威嚇行為は、イランと北朝鮮の非核化交渉の当事者としての資格に疑問の余地を持たせる。実際にイランと北朝鮮でのロシアの行動は核不拡散よりも地政学上のパワー・ゲームを志向しているようにさえ見える。我々はプーチン氏の優先順位が欧米との競合と核軍備管理のどちらにあるのかを批判的に検証するべきである。

 プーチン政権はイランとの核交渉の当事者でありながら、P5+1の役割と矛盾するような挑発的な行動にも出ている。クリミア危機と並行して、ロシアは昨年2月よりイランと二国間経済協力に向けた交渉を開始し、民間用原子力発電所の建設を支援する見返りにルコイル社への石油および天然ガス開発の利権供与を持ちかけた。イランのメフディ・サナイ駐露大使は「16世紀以来の友人であるロシアがイランの市場で優遇されるのは当然だ」と述べた。実際にロシアのセルゲイ・リャブコフ外務次官は当件に関して「ロシアはウクライナ危機で欧米から受けた制裁に報復措置をとる」と語った。欧米の批判にもかかわらずロシアはイランで原子炉2つの建設を行なうと合意した。どのような原子力技術であれイランへの移転は危険だという批判も挙がっている。非常に問題なのは、現在交渉中の原子力協定ではイランのウラン濃縮能力が制限されない。しかしオバマ政権はこの協定自体への反対を引き下げた。その一方でアメリカと同盟諸国はイランにウラン濃縮の停止を要求した。

 濃縮ウランに関しては、2009年にイランは自己申告した医療用の低濃縮ウランをロシアとフランスに輸送し、そこで核燃料に加工することで合意した。しかしその合意では申告されない濃縮ウランまでカバーしていない。しかしイランは今年の初旬に「アメリカとはそのような合意はしていない」と表明した。現在交渉中の核協定はそれほど脆弱なので、低濃縮ウランがロシアに輸送されてもその後の行動まで規制できないと思われる。核交渉が第一次合意にいたった今年の2月23日、プーチン政権はイランに新型のアンテイ2500防空ミサイル・システムの売却を決定した。ロシアがハイテク兵器の輸出に踏み切ったことで、イランに対する国際的な制裁が空洞化しかねない。(つづく)
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