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2015-03-13 20:40

(連載1)プーチン大統領は核大国の責任を果たす気があるのか?

河村  洋  外交評論家
 国連安全保障理事会の常任理事国の指導者ともなれば、大西洋憲章と国連憲章に記されているように国際公益を守るために責任ある行動をとるものとされている。しかしウクライナ危機以降にロシアが新たに打ち出した核戦略ドクトリンとヨーロッパでの挑発的な行動から、プーチン大統領は大国としての責務と責任を果たすよりもその地位を濫用しているのではないかと疑わざるを得ない。プーチン氏が核による威圧を行なえば国際安全保障は不安定化するのみである。そうした問題をはらみながら、ロシアはイランでのP5+1協議と北朝鮮での六ヶ国協議の両方で当事者となっている。よってプーチン大統領が世界の核の脅威を低下させる責任を果たすかどうかを批判的に問いかけねばならない。

 新核戦略ドクトリンよりも以前から、ロシアは核戦力を強化してきた。最近になってボレイ級潜水艦に配備されたブラバーSLBMは敵のミサイル防衛システムを通り抜けられる。さらに問題なのはイスカンダル移動式戦域弾道ミサイルで、アメリカ側はこれを1987年の中距離核戦力全廃条約に対する違反だと非難している。こうした核攻撃能力の拡大を背景に、ユーリー・ヤクボフ退役陸軍大将は昨年9月にインテルファクス通信社に対して「ロシアは敵への先制核攻撃ができるように軍事ドクトリンを改訂し、アメリカとNATOが最も重大な安全保障上の脅威だと明言すべきだ」と語った。新ドクトリンがヨーロッパで広く懸念されているのは、近年になってロシアの強硬姿勢が目立つからである。

 ウクライナ危機が深まるとロシアはイギリス上空に頻繁に侵入するようになった。英空軍のタイフーン戦闘機がスコットランド上空でTu95爆撃機の侵入阻止をするのは日常茶飯事となり、中にはさらに南下してイギリス海峡まで飛来して核兵器ミサイルまで搭載している機体もあった。サー・トニー・ブレトン元駐露大使は「プーチン政権は西側のウクライナ介入に関してイギリスに怒りの意を示したいのだ」と述べている。ロシアは海からも侵入してくる。今年の2月には英海軍のフリゲート艦「アーガイル」はイギリス海峡でロシアのフリゲート艦「ヤロスラフ・ムードルイ」と補給艦「コラ」を追跡した。さらに危険なことに、昨年12月にはロシアの軍事偵察機がデンマーク発でスウェーデン沖を飛行中のSAS旅客機とニアミスを引き起こしている。デンマークとスウェーデン両国は民間飛行の安全のためにロシア大使を呼び出して事情説明を求めた。(つづく)
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