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2015-03-11 06:27

手が付けられない鳩山“ルーピー外交”

杉浦 正章  政治評論家
 「馬鹿に付ける薬はない」ではありきたりだが、「馬鹿者と酒酔いはよけて通せ」では国が恥をかく。「馬鹿と鋏(はさみ)は使いよう」というが、その使い道がないほどの馬鹿はどうする。まあ「馬鹿は死ななきゃなおらない」とそのときを待つしかない。「憲政史上に残る愚劣な首相」と産経にこきおろされた鳩山由紀夫がもうどうにも止まらない。昔の映画「馬鹿が戦車でやってくる」そのものだ。今度は外務省の反対もどこ吹く風とばかりにただいまクリミア視察中だ。外務省筋は「仮にも日本の首相であったものがクリミアを訪問することの重大さを鳩山さんは知らない」と漏らす。政府は、ロシアによるクリミアの一方的な併合を「国際法違反」として認めておらず、外相・岸田文雄は3月10日の記者会見で「日本政府の立場とは相いれず遺憾だ」と懸念を表明した。首相経験者がロシアの関連法令に基づいてクリミア入りすることで、日本の立場に誤解を与える可能性があると指摘される。

 鳩山は5月に東京で開かれるロシア文化フェスティバルの組織委員長を務めており、その準備でモスクワを訪れ、その足でクリミアを訪問したものだ。四面楚歌で国際的に孤立しているロシア外交にとっては願ってもない“得点”だ。おそらくロシアも日本の元首相の宣伝価値を天秤にかけて、これはやりがいがあるとばかりに、狡猾なる外交官が「クリミアまで足を伸ばしてはいかが」と誘ったに違いない。鳩山は「外交をやるのは外務省だけではない」とうそぶいて、得々としているが、その“外交活動”を分析すると、すべからく相手国によって利用されている。「憲政史上に残る愚者」をだまし、利用するのは利口でなくても普通の人でも十分可能だ。一番だましたのは小沢一郎だろう。だから鳩山は「小沢一郎さんは最もクリーンな政治家」と崇拝しているのだ。外国で鳩山をだましたのは、これまた狡猾なる中東の外交官だ。2012年にイランを訪問した際イランの核開発問題についてマフムード・アフマディーネジャード大統領と話し合った。イランのメディアはこの会談で、鳩山が「国際原子力機関がイランなどに二重基準的な対応をとっているのは不公平だ」と語ったと報じた。日本国内のごうごうたる批判を浴びると、鳩山は「このような発言はしていない、イラン側の発表は捏造だ」と否定したが、あとの祭りだ。

 中国が「ルーピー活用」に目を付けないわけがない。2013年、中国訪問中の鳩山が沖縄県・尖閣諸島をめぐり、日本政府の「日本固有の領土であり領有問題は存在しない」という立場を無視して「日中間の係争を認めるべきだ」と発言した。明らかに中国側からの吹き込みをそのまま口にしたものだ。あの物静かな名防衛相・小野寺五典をして「理解できない。『国賊』という言葉が一瞬、頭をよぎった」と非難させるに至った。しかし自発的に行った外交上の大失政もないわけではない。普天間基地移設先について「県外移設に県民の気持ちが一つならば、最低でも県外、出来れば国外の方向で、我々も積極的に行動を起こさなければならない」と発言したのだ。日米安保政策の大転換だが、それすら気づいていないとみえて、オバマに「トラスト・ミー」とやったのだから呆れ返って物が言えない。すぐにワシントンポストが「Loopy]と名付けて、ガーディアンなど英国紙などがこれを使った。

 民主党は幹事長・枝野幸男が「鳩山とは関係ない」とばかりにクリミア訪問事件でアリバイ作りに懸命だ。「鳩山氏は民主党を離党して2年近くが過ぎており、今回の行動を含めその言動について、民主党は一切関知するものでない」と関係を否定。「日本政府は、ロシアによるクリミア編入を『一方的な併合で国際法違反』として認めておらず、民主党もこの立場を支持する。総理大臣経験者が、ロシアの査証でクリミアを訪問することは、日本の立場について誤解を与え、ロシアに利用されるおそれもあり、軽率とのそしりを免れない」と鳩山の訪問中止を求めたが、後の祭りだ。民主党は鳩山との関係を否定しても、愚者を首相に担いだ責任までは免れられまい。全てはかつて「民主党政権の首相」だった鳩山の行為なのである。日本外交は「鳩山外交」に処置なしの呈だ。まさかカメラマン並みにパスポート返納命令を出すわけにもいくまい。本当は返納させて、「ISILに行く」と言い出したときだけ許可するのも一案だ。
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