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2015-03-07 14:49

(連載1)21世紀は殺人の世紀か

中村  仁  元全国紙記者
 まずお断りしておきます。殺人には、いいも悪いもなく、すべてが間違いなく悪です。それでも殺人、殺害には節度やルールがあったはずです。その境界線がなくなってきました。20世紀は戦争と革命の世紀でした。このままだと21世紀は、人間同士が殺しあう殺人の世紀になりかねません。川崎市の中学一年生(13)が18歳の少年ら3人に多摩川の河川敷で殺されました。学校や地域の子供たちは親たちが殺害現場を訪れ、追悼の献花をしました。おびただしい数の花束を見るにつれ、この明るい元気だった少年が回りからどんなに愛され親しまれ、その死がどんな深い悲しみをみなにもたらしたか、伝わってきました。

 母親が姿を見せないので、心配していると、通夜の夜、初めてコメントを出しました。恐らく悲嘆と失意、困惑と絶望の中で、身動きすらできなかったのでしょう。立派な文章です。「通夜を本日、執り行いました。明るい優しい子、友達も多く、下の兄弟たち面倒をみてくれていました。家のなかでは、いたって元気でした」。メディアが流した少年のはつらつとした顔写真から想像するとおりのコメントです。悲しみを誘うのは「私や家族に心配をかけまいと、必死に平静を装っていたのだと思います」の下りです。恐らく母子家庭でしょう。働きにでる母親をのことを思い、年上の少年から殴られ、アザができても我慢を続けていた母思いの中学生です。母親は「このようなむごく残忍なことを行える人間が存在することが信じられません」と、思いをつづります。

 この母は今後、どんな気持ちで生きていくのだろう。自らを責め、失意の中で生きていくのだろうか。犯人の少年たちもいずれは、罪の深さを知り、後悔しても後悔しきれない心の暗闇の中で生きていくのだろうか。なぜ殺してしまったのかと、思い続けることだろうか。こうした思いを社会で共有することこそが殺人、殺害に対する歯止めになるはずなのです。「なぜ殺してしまうのか」を、殺す前に考えない時代にしまったのでしょう。われわれの周りを見つめると、動機があるようで、それが動機とはいえない殺人があまりにも増えています。殺人には節度とルールがあったはずです。やっていい殺人とやってはいけない殺人の境界線がなくなってきているのです。それでも家庭、地域での殺人はまだ分りやすい。

 重大なのは国家間、民族間の殺人、殺害です。イスラム過激派によるテロ、大規模の殺傷はとどまるところを知りません。それを封じこめるために、米欧などの有志連合は空爆を続け、「数千人の戦闘員を殺す戦果があった」ことを誇る時代です。相手が非道な暴力組織ですから、自衛のために許容される戦闘でしょう。問題はどんなに過激派を殺害し続けても、かれらを根絶できそうにないところあります。まとも感覚をもった中東専門家の多くはそう主張します。 (つづく)
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