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2015-02-24 10:17

(連載2)予想される国際テロの激化に備えよ

角田 勝彦  団体役員、元大使
 資金源断絶については、IS支配下の油田空爆、原油購入規制、人質身代金支払い拒否(2013年アイルランドのロックアーン・サミット宣言)に加え、2015年2月10日イスタンブールで開かれた20カ国・地域(G20)財務相・中央銀行総裁会議は、テロ組織の資金遮断へ結束するとの共同声明を採択した。国連安保理も12日午前、ISなどの資金源の遮断を目指したロシア主導の決議案を全会一致で採択した。

 米国は、ISに拘束された米国人人質が殺害されていく状況(最近ではケイラ・ミュラーさん)にも鑑み、テロ掃討作戦強化に踏み切った。すなわち2月11日、オバマ米大統領は、IS壊滅に向けて限定的な武力行使容認を正式に求める新たな決議案を議会に提出した(本格的地上部隊投入には慎重だが有効期間はオバマの残り任期2年を超える3年)。米国防総省は来年度予算のIS掃討作戦費として、前年度比約4%増の53億ドルを要求した。具体的にも、米中央軍当局者は、2月19日、記者団に、ISが支配するイラク北部の大都市モスル奪還作戦の開始時期について4~5月を目指して準備を進めていると明言した。
ただし地上戦の主力を担うのは、米軍でなく、イラク軍やクルド人治安部隊ペシュメルガ、シリア反体制派などで計2万~2万5000人投入が予定される。米国は、さらに2月19~20日ワシントンで、ISなど過激派対策に関する閣僚級の国際会議「暴力的過激主義対策(CVE)サミット」を開催した(日本からは中山泰秀外務副大臣出席)。この会合は、ISなどの宣伝戦へのソーシャルメディアを使っての対抗措置を強化するとの共同声明を発表し、危険人物の渡航制限のため、人定や移動に関する情報を国際刑事警察機構(ICPO)でデータベース化することも確認した。

 このような対策強化によりIS掃討が進展していくのは期待できる。米国内にはイラク、アフガンの例を惹き泥沼化を恐れる声も聞かれるが、アラブ諸国を含めIS支持者が見られない国際世論がこれを裏付ける。ISは残虐非道な殺戮によって自らの墓穴を掘っている。問題は掃討に慎重さが必要なことである。オバマは3年が必要としたが、無辜の住民を巻き込まずテロリストを掃討するには時間がかかってもやむをえない。テロリストが他地域に逃れたり再起したりしないよう配慮するのも大切である。

 ISから敵とされた日本としても防衛策が必要だろう。共同通信社が2月6,7両日に実施した全国電話世論調査によると、日本人の対テロ安全確保に必要な措置としてあげられたのは、「テロを水際で防止する入国審査の強化」が68・3%で最多、「危険情報の周知徹底」35・8%、「情報収集態勢の拡充」34・5%の順だった。このほかIS支援にもなりかねないマスコミの過剰取材の自粛(フリージャーナリスト利用の自粛を含む)、人質を生みかねない危険地域への渡航の規制、人質事件が発生した場合の交渉人の育成、国内での大型テロ発生の場合の備えの拡充なども考えられよう。 国家安全保障会議(NSC)も活用し対策を講じていくことが望まれる。(おわり)
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