国際問題 外交問題 国際政治|e-論壇「百花斉放」
ホーム  新規投稿 
検索 
お問合わせ 
2015-02-24 06:30

農相辞任の政権への影響はほとんどない

杉浦 正章  政治評論家
 イタチの最後っ屁のように「説明しても分からん人は分からん」との“迷言”を農相辞任の西川公也は吐いたが、分かる人は分かる。この辞任は早ければ早いほどよかった。本来なら総選挙後の組閣の際に外しておくべき人事であった。首相・安倍晋三は第1次内閣で苦汁をなめただけあって、閣僚辞任処理は電光石火型だ。事前の準備なくして天皇を煩わせる認証式まで一日では終えられない。辞任させたからには、新農相・林芳正のもとにTPP(環太平洋経済連携協定)の妥結、農協改革など農政の建て直しを早期に実施する必要がある。辞任の影響は最小限にとどまるだろう。野党が予算を人質に取って国会審議を遅延させる愚行に出たとしても、世論は支持しない。政府・与党は年度内成立をあきらめずに至上課題と心得てまい進すべきだ。

 官邸筋によると、西川は自らの問題が首相のヤジ問題というあらぬ方向にまで発展して申し訳ないという気持ちであったという。先週末に辞任の意向を官邸に伝え、官房長官・菅義偉との調整も行われた。そして表向きは安倍が慰留したが西川の意志が固かったという筋書きを作って、休み明け23日に一挙に展開させた形だ。安倍にしてみれば農水族の西川は、TPPや農協改革問題での自民党内抑え役として農水相に抜擢したものであり、今後の党内調整にも必要な人材であり、敵に回しては元も子もない。何としてでも円満に辞任させる必要があったのだ。こともあろうに安倍は西川を擁護するあまりに、自ら舌禍事件を巻き起こしてしまった。民主党の質問に「日教組」「日教組」とヤジを飛ばし、「補助金をもらっている日教組の教育会館から献金をもらっている議員がいる」とまで言い切ってしまったのだ。後で誤解と分かり「わたしの記憶違いによる正確性を欠く発言で遺憾であった。訂正する」と言わざるを得なくなった。不用意な発言であらぬ方向に事態が拡大しそうになって、安倍にとっても更迭は不可欠の様相を帯びていたのだ。第2次内閣で二人辞任しており、三人目の辞任となり、安倍内閣のイメージダウンはさけられない。増長はすべきではないが、はっきり言って閣僚の不祥事による辞任などは盤石の大局には関係ない。野党とマスコミが2日か3日間大騒ぎするだけだ。

 大局に関係あるのは民主党の鳩山由紀夫や菅直人のように、首相の素質そのものが問われるケースだ。安倍の場合は近来まれに見るリーダーシップのある首相だ。アベノミクスは日本に未曾有のやる気と活力を引き起こしており、国内総生産(GDP)好転で、デフレ脱却も視野に入ってきている。中国の海洋進出による東シナ海の事態には、日米同盟を強化し、集団的自衛権の行使容認に踏み切った。民主党政権は米国から「ルーピー鳩山」とさげすまれ、大震災で菅はうろたえ、首相・野田佳彦だけはよかったが、前の二人が悪すぎて選挙に大敗した。その民主党は、アベノミクスでも集団的自衛権でも、安倍に論破されている事態だ。代表・岡田克也の追及は本会議も予算委も泡の抜けたビールそのものであった。民主党は、国民にとって「悪夢の3年3か月」の政権時代を経て、選挙大敗で脳しんとうを起こし、安倍政権追及も後遺症の域を抜け出られない。国会論議は本筋の問題で対決すべきところであるが、本筋は棚上げにしてもっぱら閣僚の個人攻撃などという疝気筋を指向する。

本道を外れた追及で伴食閣僚の寝首を掻いても国民は「それなら民主党政権」と言うだろうか。全く言わない。民主党には政権交代に向けての対立軸などはないし、能力も人材もない。閣僚の辞任という敵失に勢いづいて民主党は、維新、共産党と計って、予算を人質に取りそうな国会戦術をとろうとしている。2月24日は審議拒否だという。まるで社会党政権時代に戻ったかのようである。15年度予算案は日本が長期低迷のデフレから脱却できるかどうかをかけたものと言ってもよい。その予算案を人質に取って国会審議を停滞させれば、困るのは国民である。野党はここは正常な審議に一日も早く立ち戻って、経済、外交、安保で真っ正面から政権との論争を展開すべき時だ。それとも国会論戦は全て安倍に論破されてしまって、疝気筋のテーマしか見つからないのか。政府・与党は日程が苦しくなったが、予算の年度内成立を目指して強気の国会運営をすべきである。ここは暫定予算などに走るべきではない。あくまで本予算の年度内成立を図るべきだ。閣僚の辞任如きで国政を渋滞させる時ではない。
お名前は本名、またはそれに準ずる自然な呼称の筆名での記載をお願いします。
下記の例を参考にして、なるべく具体的に(固有名詞歓迎)お書き下さい。
(例)会社員、公務員、自営業、団体役員、会社役員、大学教授、高校教員、大学生、医師、主婦、農業、無職 等
メールアドレスは公開されません。
ただし、各投稿者の投稿履歴は投稿時のメールアドレスにより抽出されます。
投稿記事を修正・削除する場合、本人確認のため必要となります。半角10文字以内でご記入下さい。
e-論壇投稿の際の注意事項

1.投稿はいったん管理者の元へ送信され、その確認を経てから掲載されます。
なお、管理者の判断によっては、掲載するe-論壇を『百花斉放』から他のe-論壇『議論百出』または『百家争鳴』のいずれかに振り替えることがありますので、予めご了承ください。

2.投稿された文章は、編集上の都合により、その趣旨を変えない範囲内で、改行や加除修正などの一定の編集ないし修正を施すことがありますので、予めご了承ください。

3.なお、下記に該当する投稿は、掲載をお断りすることがありますので、予めご了承ください。

(1)公序良俗に反する内容の投稿
(2)名誉や社会的信用を毀損するなど、他人に不快感や精神的な損害を与える投稿
(3)他人の知的所有権を侵害する投稿
(4)宣伝や広告に関する投稿
(5)議論を裏付ける根拠がはっきりせず、あるいは論旨が不明である投稿
(6)実質的に同工異曲の投稿が繰り返し投稿される場合
(7)管理者が掲載を不適切と判断するその他の理由のある投稿


4.なお、いったん投稿され、掲載された原稿の撤回(全部削除) は、原則として認めません。
とくに、他人のレスポンス投稿が付いたものは、以後部分的であるか、全部的であるかを問わず、いかなる削除も、修正もいっさい認めません。ただし、部分的な修正については、それを必要とする事情に特別の理由があると編集部で認定される場合は、この限りでありません。

5.投稿者は、投稿された内容及びこれに含まれる知的財産権(著作権法第21条ないし第28条に規定される権利を含む)およびその他の権利(第三者に対して再許諾する権利を含む)につき、それらをe-論壇運営者に対し無償で譲渡することを承諾し、e-論壇運営者あるいはその指定する者に対して、著作者人格権を行使しないことを承諾するものとします。

6.投稿者は、投稿された内容をその後他所において発表する場合は、その内容の出所が当e-論壇であることを明記してください。

 注意事項に同意して、投稿する
記事一覧へ戻る
公益財団法人日本国際フォーラム