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2015-02-16 01:32

停戦合意しても、和平からまだ遠いウクライナ

飯島 一孝  ジャーナリスト
 ウクライナ紛争を巡る独仏露とウクライナの首脳会議は2月11日夜から16時間に及ぶマラソン会談となり、ようやく15日から停戦することで合意した。だが、プーチン大統領のゴリ押しで親露派に有利な内容となり、ロシア各紙も和平が実現するどころか、戦争に発展する最悪の結果になる可能性を示唆している。ロシアの中立系「独立新聞」は13日付けの電子版で「ウクライナは平和を望むが、最悪の結果になりそうだ」との見出しをつけている。また、民主派の英字紙「モスコー・タイムズ」の電子版も「首脳会談は停戦を提案したが、和平は来ない」との見出しで悲観的な見通しを書いている。

 今回の合意は、昨年9月の停戦合意をベースに、(1)15日から停戦開始(2)ウクライナと親露派双方が射程の長さによって重火器を前線から最大140キロ引き離し、緩衝地帯を設ける(3)親露派支配地を「暫定自治区」とする、の3点が中心だ。昨年9月のミンスク合意と大きく違ったのは、緩衝地帯の範囲だ。重火器を引き離す基点がウクライナ軍は現状の前線を基点にするのに対し、親露派は昨年9月の位置を基点にしており、年明けから猛攻撃で支配地域を拡大した親露派に断然有利になっている。また、親露派支配地を「特別な地位」から「暫定自治区」に格上げした形だ。

 「独立新聞」は、今回の合意を「肯定的に評価すれば、ポロシェンコ・ウクライナ大統領は国家の構成などの戦略的問題で譲歩しなかった。一方、プーチン大統領もこれまでの方針を後退させなかった」と結論付けている。だが、結果的にはウクライナ側に明らかに不利になり、ウクライナの政治学者は「ロシア側が譲歩すると期待する方が間違っている」とコメントしている。また、ウクライナの軍事専門家は「紛争はなくならないばかりでなく、戦争に発展する可能性がある。ウクライナは将来に備えて、あらゆるシナリオを準備しておくべきだ」と警鐘を鳴らしている。

 一方、トレーニン・モスクワ・カーネギー・センター所長は「モスコー・タイムズ」のインタビューで「ドネツク州がウクライナに復帰するとは思えない。(モルドバ国内の)沿ドニエストル共和国と(アゼルバイジャン国内の)ナゴルノ・カラバフ共和国の中間のような存在になるのではないか」と述べている。今回の合意がソ連解体後の「凍結された紛争地域」を「紛争地域」へと導く道を開く可能性を示唆しているのだ。いずれにしろ、今回の合意がウクライナ紛争の終結に向かうとの見方は少ない。今後もウクライナ東部で戦闘が続けば、米国が兵器をウクライナに貸与し、ロシアと米国との代理戦争になることは必定だ。そうした最悪の事態をどうしたら食い止めることができるのだろうか。
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