国際問題 外交問題 国際政治|e-論壇「百花斉放」
ホーム  新規投稿 
検索 
お問合わせ 
2015-02-12 01:17

(連載2)消費税軽減は週刊誌を除外していい

中村  仁  元全国紙記者
 新聞界の主張にも苦しいところがあるのです。欧州の消費税導入の歴史は古く、国民の反発を防ぐために軽減税率を組み合わせてきました。「だから日本も」といっています。これは正確ではありません。1990年代以降(日本は89年)に消費税を導入した国を調べると、ほとんどが単一税率だそうです。「どの品目を対象とするかという線引きで必ず不満がでる」、「どこの国も財政状況が苦しく、減収幅が大きくなる軽減税率を嫌う」、「複数税率は納税作業を煩雑にする」などのためです。新聞はそうした経緯を取り上げません。

 朝日新聞の慰安婦、原発報道の捏造問題は、新聞の信頼度を失墜させ、新聞の公共性を疑う読者が増えています。「新聞は含めるな」という声がかなり聞かれます。朝日が大嫌いな安倍政権は新聞を含めるかどうか、態度を明らかにしていません。もっとも安倍政権が大好きな新聞社の政治力もあって、結局は対象品目になるでしょう。 新聞界は昨年4月の消費費税引き上げ(3%アップの8%)の影響で販売部数がどの程度、減ったかも明らかにしておりません。「消費増税で部数の落ち込みが大きく、社会的役割を果たせなくなる」と主張するには、経営実態を公表していかないと、国民の理解を得られにくいでしょう。

 もうひとつは新聞とセットになっている出版物の扱いです。「知識の提供、文化水準や識字率の維持」という意味では、少なくとも書籍は対象にすべきでしょう。活字離れ、出版不況のもとで、96年をピークに販売金額は減り続け、この上さらに、消費増税の痛撃が加わると、良質な出版活動に支障がでますね。対象品目に含めるべきでしょう。電子出版を含めるのか、除外するのか、という面倒な線引きも判断しなければなりません。

 問題は雑誌です。国民の知的水準、文化水準の維持に貢献している雑誌も多いことは確かです。雑誌に週刊誌が含まれます。「国民にとって必要不可欠」の生活必需品かというと、ノーという国民がほどんどしょう。スキャンダル、いい加減なうわさ、セックスなどを売り物にしている有力週刊誌は多いのです。政治家のスキャンダル記事を嫌う自民党が週刊誌はずしに動くかもしれません。週刊誌と月刊誌を線引きするしようとすると、政府による言論、表現に自由に対する「検閲」みたいなことなりかねません。そこで雑誌全体を除外してしまう選択はありえます。  

 出版界も自助努力は必要です。苦し紛れに発行部数を増やしてしまい、売れない本、売れない雑誌を作りすぎています。書店から出版社に戻ってくる返品率は書籍、雑誌は40%弱にものぼり、経営難を招き、自分で自分の首をしめています。こんなに返品が多い業界は他にはないでしょうね。日本の硬直的な出版慣行を改めれば、経営改善につながるはずです。(おわり)
お名前は本名、またはそれに準ずる自然な呼称の筆名での記載をお願いします。
下記の例を参考にして、なるべく具体的に(固有名詞歓迎)お書き下さい。
(例)会社員、公務員、自営業、団体役員、会社役員、大学教授、高校教員、大学生、医師、主婦、農業、無職 等
メールアドレスは公開されません。
ただし、各投稿者の投稿履歴は投稿時のメールアドレスにより抽出されます。
投稿記事を修正・削除する場合、本人確認のため必要となります。半角10文字以内でご記入下さい。
e-論壇投稿の際の注意事項

1.投稿はいったん管理者の元へ送信され、その確認を経てから掲載されます。
なお、管理者の判断によっては、掲載するe-論壇を『百花斉放』から他のe-論壇『議論百出』または『百家争鳴』のいずれかに振り替えることがありますので、予めご了承ください。

2.投稿された文章は、編集上の都合により、その趣旨を変えない範囲内で、改行や加除修正などの一定の編集ないし修正を施すことがありますので、予めご了承ください。

3.なお、下記に該当する投稿は、掲載をお断りすることがありますので、予めご了承ください。

(1)公序良俗に反する内容の投稿
(2)名誉や社会的信用を毀損するなど、他人に不快感や精神的な損害を与える投稿
(3)他人の知的所有権を侵害する投稿
(4)宣伝や広告に関する投稿
(5)議論を裏付ける根拠がはっきりせず、あるいは論旨が不明である投稿
(6)実質的に同工異曲の投稿が繰り返し投稿される場合
(7)管理者が掲載を不適切と判断するその他の理由のある投稿


4.なお、いったん投稿され、掲載された原稿の撤回(全部削除) は、原則として認めません。
とくに、他人のレスポンス投稿が付いたものは、以後部分的であるか、全部的であるかを問わず、いかなる削除も、修正もいっさい認めません。ただし、部分的な修正については、それを必要とする事情に特別の理由があると編集部で認定される場合は、この限りでありません。

5.投稿者は、投稿された内容及びこれに含まれる知的財産権(著作権法第21条ないし第28条に規定される権利を含む)およびその他の権利(第三者に対して再許諾する権利を含む)につき、それらをe-論壇運営者に対し無償で譲渡することを承諾し、e-論壇運営者あるいはその指定する者に対して、著作者人格権を行使しないことを承諾するものとします。

6.投稿者は、投稿された内容をその後他所において発表する場合は、その内容の出所が当e-論壇であることを明記してください。

 注意事項に同意して、投稿する
記事一覧へ戻る
公益財団法人日本国際フォーラム