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2015-01-20 10:22

(連載2)佐賀県知事選とアベノミクス

角田 勝彦  団体役員、元大使
 世界も日本経済の先行きを楽観視していない。日本の景気は足踏み状態に陥ったと見られている。経済協力開発機構(OECD)は1月15日発表の世界経済の中間見通しで、2014年の日本の実質経済成長率を5月の1・2%から0・9%に下方修正した。これに対処するため、昨年12月24日発足した第3次安倍内閣は、引き続き「経済最優先」の姿勢で国政に臨んでいる。12月27日政府が決めた総額3.5兆円の経済対策や1月14日閣議決定した過去最大96兆3420億円の2015年度当初予算案が、その具体的現れである。賃上げや地方活性化による国内需要の拡大が模索されている。

 1月12日には2015年度の国内総生産(GDP)成長率を実質1・5%、名目2・7%とする政府経済見通しが閣議了解された。原油価格下落などの支援要因もあり、実現は可能かもしれない。問題は、アベノミクスが日本再生の本丸とする第3の矢、成長戦略で、あまりに新自由主義的規制緩和に走りすぎていることである。例えば安倍政権は、医療、労働などと並び規制緩和が困難な(いわゆる岩盤規制の)農業について、JA全中の地域農協への監査権限廃止などを求めている。農業の生産性向上という方向は正しいとしても、集団的自衛権行使限定容認の閣議決定のときと同じく、あまりに独断的である。安倍首相自ら1月17日カイロでの中東政策スピーチで、「中庸が最善」と説いたが、国内では中庸を忘れた猛進が過ぎるといわざるを得ない。

 広く国民の支援が得られない限り、成長戦略の成功はおぼつかない。4月の統一地方選では国民の支援の有無が問われよう。なお、統一地方選では、政府が避けたくても、安保法制も問題にされよう。集団的自衛権限定行使容認の閣議決定を踏まえた安全保障法制について、政府は統一地方選後の4月末に閣議決定し関連法案を国会提出する方針とされるが、そのためには法制の骨格に関する与党協議を2月前半から本格化させる必要があるからである。日米防衛協力のための指針(ガイドライン)の再改定についての最終報告も本年前半に予定されている。

 要するに、悲願とする「戦後体制(レジーム)からの脱却」をめざして、安倍首相はスピードをあげすぎているように見える。最近では、憲法改正の発議について「維新の党の賛成で多数を構成できればいい」と述べ、自民党大阪府連が反対している「大阪都構想」に理解を表明してまで、維新の党最高顧問の橋下徹大阪市長と連携を深めている。「中庸が最善」である。統一地方選は、国民がどこまで安倍政権の猛進を許容するかを示すものとなろう。(おわり)
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