国際問題 外交問題 国際政治|e-論壇「百花斉放」
ホーム  新規投稿 
検索 
お問合わせ 
2015-01-07 16:23

C02対策めぐる不可解な用語

中村  仁  元全国紙記者
 北日本を襲う豪雪被害を目にして、これも地球温暖化の影響だといいます。夏の台風、猛烈な低気圧の襲来のときの災害も、地球温暖化が人間社会に牙を向けたとされます。そうなのでしょう。それにつけて思うのは、地球環境問題の用語があまりにも不可解で、実感が伴わないどころか、正反対のイメージを持ってしまっていることです。早く、緊迫感がわいてくる言葉に変えてくれませんかね。「地球温暖化の原因となるCO2の排出量を抑制しよう」とか、「温室効果ガスの削減をしなければならない」とかいいますよね。これらの問題を扱う国際協議のことを「気候変動枠組み条約」の国際会議と呼びます。日本語に直すといずれも妙な語感を持つ言葉なのですね。

 「地球温暖化」は「global warming」の直訳でしょうね。産業革命以降の気温上昇を2度以内に抑えることが国際目標ですから、厳密にいうと「温暖化」の範囲に入るのでしょう。日本では「温暖な気候」、「気候温暖な土地」のように、肯定的にとらえる語感を持つ言葉ですね。豪雪のシーンにはいかにも、「温暖化」には違和感があります。「地球温暖化」が世界各地で猛威をふるう異常気象の原因だとすれば、せめて「気温上昇誘発の原因」、あるいは「気象激変効果」を組み合わせた言葉にして欲しいですね。温室効果ガスはどうでしょうか。これも「greenhouse effect gas」からきているのでしょう。日本語では「温室」も肯定的な意味がこめられています。「温室」は果物、野菜を育て、恵みをもたらしてくれます。「温室効果ガス」なんて呼んでいたら、「いいことではないですか」が大方の反応でしょう。豪雪、台風被害に絡んで、「温室効果ガスが気候変動の原因」と解説するのは、どこか場違いな感じを与えます。「自然災害誘発ガス」、「生態系破壊ガス」に変えたらどうでしょうか。

 気候変動もいけませんね。これはまさに「climate change」の英語の直訳でしょうね。官僚の用語は感情を排除し、刺激的な語感を避ける傾向があります。「気候変動」にはいかにもやさしい語感があります。「異常気象抑止枠組み条約」のほうがぐさりと胸に迫ってきます。「地球環境破壊防止条約」でもいいですよ。日本で薬物中毒事件に関連して、「危険ハーブ」という呼ばれ方がしばらく使われていました。「ハーブ」は基本的には人体にいいものなので、この呼称は緊迫感がありませんでした。今では「危険ドラッグ」ですね。「温暖化」、「温室効果」は、この「ハーブ」に似たような肯定的なニュアンスがあります。中国が苦しみ始めている「大気汚染物質」は、言葉を耳にしたとたん、それが有害な物質であることがよく分ります。環境用語にも工夫が必要です。

CO2抑制で注目される太陽光、水力、風力などを「再生可能エネルギー」と呼んでいます。これらは自然エネルギーで補充はいくらでもできますから、石油のように枯渇することはないにせよ、「再生可能」は一種の誤訳か超訳です。これは英語の「renewable energy」からきています。本来、「renew」には「再生」という意味はなく、正しく直訳すれば、「枯渇せず、補給できるエネルギー」でしょうね。日本語の「再生可能」には「リサイクル」という意味がはいっていますので、誤訳ですね。素直に「自然エネルギー」とすると、「石油、石炭も自然界にそのままの形で存在するから自然エネルギーだ」といわれかねません。石油、石炭と同じ扱いにするわけにはいかず、意図的な誤訳で通したのでしょう。「地球温暖化」や「温室効果ガス」こそ、意図的な誤訳、超訳が必要だと思いますね。他の国ではどんな呼びかたをしているのでしょうか。
お名前は本名、またはそれに準ずる自然な呼称の筆名での記載をお願いします。
下記の例を参考にして、なるべく具体的に(固有名詞歓迎)お書き下さい。
(例)会社員、公務員、自営業、団体役員、会社役員、大学教授、高校教員、大学生、医師、主婦、農業、無職 等
メールアドレスは公開されません。
ただし、各投稿者の投稿履歴は投稿時のメールアドレスにより抽出されます。
投稿記事を修正・削除する場合、本人確認のため必要となります。半角10文字以内でご記入下さい。
e-論壇投稿の際の注意事項

1.投稿はいったん管理者の元へ送信され、その確認を経てから掲載されます。
なお、管理者の判断によっては、掲載するe-論壇を『百花斉放』から他のe-論壇『議論百出』または『百家争鳴』のいずれかに振り替えることがありますので、予めご了承ください。

2.投稿された文章は、編集上の都合により、その趣旨を変えない範囲内で、改行や加除修正などの一定の編集ないし修正を施すことがありますので、予めご了承ください。

3.なお、下記に該当する投稿は、掲載をお断りすることがありますので、予めご了承ください。

(1)公序良俗に反する内容の投稿
(2)名誉や社会的信用を毀損するなど、他人に不快感や精神的な損害を与える投稿
(3)他人の知的所有権を侵害する投稿
(4)宣伝や広告に関する投稿
(5)議論を裏付ける根拠がはっきりせず、あるいは論旨が不明である投稿
(6)実質的に同工異曲の投稿が繰り返し投稿される場合
(7)管理者が掲載を不適切と判断するその他の理由のある投稿


4.なお、いったん投稿され、掲載された原稿の撤回(全部削除) は、原則として認めません。
とくに、他人のレスポンス投稿が付いたものは、以後部分的であるか、全部的であるかを問わず、いかなる削除も、修正もいっさい認めません。ただし、部分的な修正については、それを必要とする事情に特別の理由があると編集部で認定される場合は、この限りでありません。

5.投稿者は、投稿された内容及びこれに含まれる知的財産権(著作権法第21条ないし第28条に規定される権利を含む)およびその他の権利(第三者に対して再許諾する権利を含む)につき、それらをe-論壇運営者に対し無償で譲渡することを承諾し、e-論壇運営者あるいはその指定する者に対して、著作者人格権を行使しないことを承諾するものとします。

6.投稿者は、投稿された内容をその後他所において発表する場合は、その内容の出所が当e-論壇であることを明記してください。

 注意事項に同意して、投稿する
記事一覧へ戻る
公益財団法人日本国際フォーラム