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2015-01-02 17:36

(連載1)新聞は編集と経営を分離できるか

中村  仁  元全国紙記者
 朝日新聞が慰安婦報道の捏造事件を反省し、第三者委員会の提言に沿って「経営陣は編集の独立を尊重し、原則として記事や論説の内容に介入することはしません」という方針を決めました。程度の差はあっても、まともな新聞社なら、どこでもこの問題はくすぶり続けてきました。原則論だけで扱えない問題ではあるにはあるにせよ、どこの社も自分の体制を改めて考えてみる機会にしたらいいと思いますね。

 朝日も「経営に重大な影響を及ぼす事態であると判断して関与する場合には、関与の責任が明確になるよう、ルールをつくる」として、完全分離はありえないことを認めています。一方、社長の独裁色が強い新聞社では、社内から「経営側からの介入だ」と反発する声もあがりにくく、実際は「介入」であっても、「介入問題」に発展しないケースが多いでしょうね。「介入」が問題になる新聞社も、ならない新聞社も、「朝日だけの問題」と考えてはなりません。もっとも日常的な個々の記事で介入が問題になることはまずなく、政権の基本政策、安全保障、エネルギー政策など、社会の見解が大きく割れる基本的な問題をめぐっての話です。

 新聞社にとっての編集とは、なんなのでしょうか。新聞社の柱になる「製品」は、新聞記事であり、報道と評論(論説、解説、キャンペーン特集)であります。家電メーカーでは、主力の製品の研究開発、製品化、マーケッティング、販売などが経営問題の中核となります。企業であるかぎり、新聞社においても、新聞社の方向づけ、基本的な編集方針、編集局や記者のありかた、紙面の作り方やその評価が当然、経営上の問題となってくるでしょう。「主筆兼社長」、あるいはほとんどの新聞社で「編集局長・専務取締役」のように、編集責任者が役員になっているのは、「原則分離」どころか「経営と編集は不可分」と考えているからです。日本新聞協会もそうした考え方です。 

 宗教新聞、政党新聞、業界紙のように、経営ないし運営主体が全面的に編集を仕切るのとは違い、日刊全国紙には一般企業と違う面があります。新聞は「社会の公共財、公器」としての性格が強く、記事の正確性、中立性、社会性が求められます。そうはいっても、編集上の価値判断によって何を取り上げるか、どう書くかが左右されるので、完全な中立性はありえません。ここでいう中立性とは、事実関係はねじまげないで書くという意味であり、その解釈や評価では、それぞれの新聞社の編集方針が反映されます。朝日の慰安婦問題では、事実でない証言を事実であるかのように報道したこと、それを軍による強制連行の証拠だとして、虚構に基づき長期間、大々的なキャンペーンに発展させました。 (つづく)
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