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2014-12-23 10:55

(連載2)日米ガイドライン再改訂の前に安保法制の十分な審議を

角田 勝彦  団体役員、元大使
 最終報告の延期を公式に明らかにした12月19日の安全保障協議委員会共同発表では、「日本の法制作業の進展を考慮しつつ,明年前半における指針の見直しの完了に向けて取り組む」とされており、メンバーの江渡聡徳防衛相は同日の記者会見で 「(集団的自衛権の行使容認を含む安全保障法制の整備と)できるだけ一緒にしたい」と説明した。日本側は、来年4月の統一地方選に影響を与えかねない時期の改定は避けたい考えである。

 筆者が、本欄への投稿「日米ガイドラインの今後(7月12~13日)」及び「日米防衛協力指針の中間報告について(10月14~15日)」で繰り返し指摘したように、「年内」との目標は無理であり、「延期」は当然である。いわゆる「武力行使の新3要件」中の「我が国の存立が脅かされ、国民の生命、自由及び幸福追求の権利が根底から覆される明白な危険がある場合」というのは、理由(この場合「我が国に対する武力攻撃が発生した場合のみならず、我が国と密接な関係にある他国に対する武力攻撃が発生したため」)の如何を問わず大事件である。自衛でなくても「緊急避難」が適用されるべき事態であろう。憲法第9条に関する従来の法制局解釈を覆そうというのであるから、少なくとも国会において十分な審議を行うことが必要である。ガイドラインの再改定は、そのあとの問題である。

 憲法改正を悲願とする安倍首相が12月15日の記者会見発言のように「(事実上の憲法改正に踏み込んだ7月1日の閣議決定に関し)支持を頂いた」と思いたいのは理解できるが、国民は、そうは考えていないようである。共同通信が衆院選を受け12月15~16日に実施した全国緊急電話世論調査によると、集団的自衛権の行使容認などの安倍政権の安全保障政策について、「支持しない」が55・1%で過半数を占め、「支持する」の33・6%を大きく上回った。

 安全保障法制の国会審議が、来年4月の統一地方選に影響を与えかねないのは、政府も十分認識しているようである。しかし、いつまでも引き延ばすわけには行くまい。安全保障法制の国会審議をおろそかなままにして、ガイドラインの最終報告を急ぐことは、国民主権軽視として許されないことである。(おわり)
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