国際問題 外交問題 国際政治|e-論壇「百花斉放」
ホーム  新規投稿 
検索 
お問合わせ 
2014-12-05 19:38

外交は衆院選の争点にならないのか?

飯島 一孝  ジャーナリスト
 師走の衆院選が公示され、14日の投票日に向け各党の論戦が本格化している。だが、「アベノミクス」はじめ経済に集中している感があり、外交や安保問題がおろそかになっている印象が否めない。戦後70年を目前に控え、もっと百年の計を見据えた日本外交のあり方を論議すべきではないだろうか。そもそも今回の衆院選は本当に必要だったのか、という根本的な疑問が消えないが、すでに選挙戦が始まっており、その問題はひとまず置いておく。安倍晋三首相の思惑から始まったこともあり、安倍政権の2年間をどう評価するかが論戦の中心になるのは当然だが、今の議論は経済問題に集中しすぎているのが気になる。

 安倍首相は一貫して「戦後政治の見直し」を主張しているが、外交・安保問題ではこれまでの自民党政権が継続してきた日米同盟重視路線を維持している。首相が推進している集団的自衛権の行使容認も、米国からの要請に応じて行っている面が強い。これでは米軍の行動を補完するだけにとどまってしまう。ウクライナ紛争で日本はG7諸国に同調してロシアへの経済制裁を強化している。当初、安倍政権は北方領土問題解決を重要施策に掲げ、プーチン大統領との交渉を進めようと制裁に慎重だったが、今ではすっかり追随した形になっている。これに対し、寛容な姿勢を示していたプーチン大統領も、最近では日本への不満を公言している。

 日本政府は年内の予定だったプーチン大統領訪日を来年早々にも行う腹積もりのようだが、ロシア側からは「制裁を継続しながら領土を返せというのはあまりにも虫のいい話」という声が聞こえてくる。このままではここ1、2年はロシアとの正式交渉は無理な情勢だ。日本政府にとって当面最大の懸案は、沖縄県の米軍普天間飛行場移設問題である。沖縄県知事選挙の結果が示しているように、日米政府が決めた名護市辺野古への移設は撤回せざるを得ない情勢になりつつある。そうなったら日米同盟にひびが入ることになりかねない。

 さらに、安倍政権は中国との間で先鋭化している尖閣諸島の領有権問題の解決も迫られている。日中首脳の間で本格的な会談を行い、緊張緩和策を早急にまとめる必要があるが、安倍政権にどんな具体策があるのか。また、韓国との首脳会談も近々に行わなければならない。外交課題は山積しているといっても過言ではない。攻める野党は、こうした外交問題を選挙戦で積極的に取り上げ、安倍政権の具体策や覚悟を問いただすべきだ。それを受け止め、政権側も真剣に検討すべきだろう。選挙戦は短いが、重要な問題を素通りすべきではない。
お名前は本名、またはそれに準ずる自然な呼称の筆名での記載をお願いします。
下記の例を参考にして、なるべく具体的に(固有名詞歓迎)お書き下さい。
(例)会社員、公務員、自営業、団体役員、会社役員、大学教授、高校教員、大学生、医師、主婦、農業、無職 等
メールアドレスは公開されません。
ただし、各投稿者の投稿履歴は投稿時のメールアドレスにより抽出されます。
投稿記事を修正・削除する場合、本人確認のため必要となります。半角10文字以内でご記入下さい。
e-論壇投稿の際の注意事項

1.投稿はいったん管理者の元へ送信され、その確認を経てから掲載されます。
なお、管理者の判断によっては、掲載するe-論壇を『百花斉放』から他のe-論壇『議論百出』または『百家争鳴』のいずれかに振り替えることがありますので、予めご了承ください。

2.投稿された文章は、編集上の都合により、その趣旨を変えない範囲内で、改行や加除修正などの一定の編集ないし修正を施すことがありますので、予めご了承ください。

3.なお、下記に該当する投稿は、掲載をお断りすることがありますので、予めご了承ください。

(1)公序良俗に反する内容の投稿
(2)名誉や社会的信用を毀損するなど、他人に不快感や精神的な損害を与える投稿
(3)他人の知的所有権を侵害する投稿
(4)宣伝や広告に関する投稿
(5)議論を裏付ける根拠がはっきりせず、あるいは論旨が不明である投稿
(6)実質的に同工異曲の投稿が繰り返し投稿される場合
(7)管理者が掲載を不適切と判断するその他の理由のある投稿


4.なお、いったん投稿され、掲載された原稿の撤回(全部削除) は、原則として認めません。
とくに、他人のレスポンス投稿が付いたものは、以後部分的であるか、全部的であるかを問わず、いかなる削除も、修正もいっさい認めません。ただし、部分的な修正については、それを必要とする事情に特別の理由があると編集部で認定される場合は、この限りでありません。

5.投稿者は、投稿された内容及びこれに含まれる知的財産権(著作権法第21条ないし第28条に規定される権利を含む)およびその他の権利(第三者に対して再許諾する権利を含む)につき、それらをe-論壇運営者に対し無償で譲渡することを承諾し、e-論壇運営者あるいはその指定する者に対して、著作者人格権を行使しないことを承諾するものとします。

6.投稿者は、投稿された内容をその後他所において発表する場合は、その内容の出所が当e-論壇であることを明記してください。

 注意事項に同意して、投稿する
記事一覧へ戻る
公益財団法人日本国際フォーラム