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2014-11-10 10:49

(連載2)日本人は平和主義を積極化できるか

神谷 万丈  日本国際フォーラム上席研究員
 湾岸戦争の頃?いや、そんなものではない。これが書かれたのは、今から45年も前の1969年のことで、筆者は、私の亡父、神谷不二なのだ。

 最近この記述に気づいたとき、私は驚愕した。自分がこの20年ほどの間考え続け、論じ続けてきたことが、それより四半世紀も前に、既に自分の父親によって説かれていたことを知ったのは衝撃的だった。だが、当時の代表的知識人によってこのような議論がなされていたにもかかわらず、日本の平和主義の消極性がその後半世紀近くたっても依然として十分には克服されておらず、われわれ外交・安全保障の専門家が45年前とほとんど同じ言葉を使ってそれについて議論をしなければならない状況が続いているという事実に気づかされたことは、それ以上に私を愕然とさせた。

 安倍首相の積極的平和主義も、集団的自衛権の限定的行使容認も、国民の支持がなければ具体的な実施は難しく、絵に描いた餅に終わりかねない。だが、日本人は、平和主義の積極的化を果たしてどこまで受け容れるだろうか。7月1日の閣議決定以降に行われた各種の世論調査は、一様に、集団的自衛権の限定的行使容認に対する反対論の根強さを示している。よく言われるように、その一因は、安倍政権による説明の不十分さにあるのだろう。だが、より根本的な要因として、平和のための軍事力の役割を認めようとしないという戦後平和主義の消極性の一側面が、今なおしぶとく生き残っていることがあるとしか思われない。

 45年間克服できなかった消極性を、日本人は克服できるのか。そして、積極的な平和主義を実践していけるのか。前途は決して楽観できるようなものではない。政府による説明も必要だろう。だが、我々言論人の役割も大きい。日本の外交・安全保障政策は、これからが正念場だ。(おわり)
 
 (付記:上の引用文中・・・で示した箇所には、それぞれ、「70年代問題との関係において」、「70年代の」、「70年代における」、「アジアにたいして」という文言が入る。)
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