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2014-11-09 11:19

(連載1)日本人は平和主義を積極化できるか

神谷 万丈  日本国際フォーラム上席研究員
 10月9日に公表された「日米防衛指針のための指針(ガイドライン)」の見直しの中間報告は、見直しが、安倍政権の掲げる「国際協調主義に基づく『積極的平和主義』」に対応し、集団的自衛権行使を限定的に可能にするための憲法解釈の変更を含む7月1日の閣議決定の内容を反映したものとなる旨を言明した。かねてより日本の戦後平和主義を消極的なものから積極的なものに転換しなければならないことを訴えてきた一人としては、我が意を得たりという思いだ。

 日本の戦後平和主義には、2種類の消極性が内在していた。それは、「平和のために行動する意思」の欠如と、「平和のために軍事力を『使う』意思」の欠如だった。湾岸危機・戦争での対応が「金しか出さない日本」、「小切手外交」との国際的批判を浴びた衝撃をきっかけに、日本人は、日本も国際平和のために人を出して役割を果たさなければならないという意識を徐々に取り戻してきた。だが、平和と軍事力を180度対極にある相容れない概念ととらえ、軍事力には平和を壊す道具にもなるが、平和を守るためにも不可欠だ、という二面性があることを認めようとしない傾向は、これまで根強く残ってきた。集団的自衛権の不行使という政策はその象徴であり、日米同盟にとっての「障害」(第3次アーミテージ・ナイ報告書)となってきた。こうした消極性が解消されるとすれば、これほど好ましいことはない。だが、私には、いまひとつ事態を楽観できないところがある。次の文章を読んでみていただきたい。読者は、これが、いったいいつ書かれたものとお思いだろうか。

 では、戦後日本の平和主義は、・・・どのように評価されるであろうか。戦後平和主義の特徴は、銃をとらない、戦争はごめんだ、核を持たない、海外派兵をしないなどの言葉にみられるように、何ものかを拒否する主義であった。高坂正堯氏のいう「否定的」平和主義である。しかしながら・・・日本が国際的により大きな役割を果たそうとしているとき、このような拒否的、消極的平和主義は、はたしてそれにどれだけなじむであろうか。

 ・・・日本の課題は、何事かをしない慎みもひきつづき必要であるが、その殻にとじこもるだけでなく・・・何事かをすることにある。とするならば、われわれの平和主義は拒否的、消極的なものから、より能動的、積極的な平和主義へと転化されなければならないはずである。日本がこれからも軍事力中心主義を排除しながら、より、積極的な国際主義的責任を負うためには、その「何ごとか」を主体的に構想し、それに向う独自の方策を開発してゆかねばならないだろう。(つづく)
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