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2014-10-28 16:48

(連載1)難局へ向かう安倍内閣に期待するもの

角田 勝彦  団体役員、元大使
 内閣改造と経済活性化で支持率回復を狙った安倍内閣のもくろみは、目玉とした女性閣僚のダブル辞任と経済の停滞で、国内面でも難局に直面している。ダブル辞任の打撃は乗り切れるにしても、首相が経済指標などを踏まえ12月上旬に判断する予定の消費税率再引き上げは難関である。世論調査での国民の反対は強く、自民党内でも実施延期説が勢力を増している。アベノミクスと財政再建の二兎を追うのは無理なようで、野党の攻勢も高まろう。延期となると、また問題である。少しきな臭くなってきた。11月中旬の沖縄県知事選や来年春の統一地方選の動向を含む政局が注目される。

 集団的自衛権の行使を認める7月1日の閣議決定後に行われた主要各紙の世論調査では、安倍内閣の支持率は急落した(読売調査では、前回の57%から48%へ)。 政府・与党は、政権発足後支持率が初めて5割を切ったことにショックを受けた。そこで当面は景気対策や秋の内閣改造などの足場固めに力を注ぎ、安保関連法案は来年の通常国会に一括して提出することとした。9月3日の内閣改造は女性閣僚を過去最多に並ぶ5人に増やしたことなどが評価され、内閣支持率は急上昇した(読売では64%へ)。ところが10月20日には不透明な資金処理の責任などで小渕優子経済産業相と松島みどり法相がダブル辞任し、さらに、小渕氏の後任の宮沢洋一大臣についても「政治とカネ」の問題が指摘された。

 しかしこのあとの内閣支持率は主要各紙の世論調査で50%前後を維持した。すなわち読売53%(前回比9ポイント減)、日経48%(同5ポイント減)、朝日49%(同3ポイント増。ダブル辞任後微増)となっている。政府・与党内では「政権へのダメージは最小限に収まった」と安堵感が広まっている由である。問題は、経済である。安倍首相は、内閣改造を行った9月3日夜の記者会見で「引き続き経済最優先で、デフレからの脱却を目指し、成長戦略の実行に全力を尽くす」と強調した。しかし景気はもたついている。

 実はこれには世界経済の好ましくない動きが影響している。10月11日、IMFの諮問機関である国際通貨金融委員会は、世界経済について、ユーロ圏の長引く低インフレ(物価上昇)や地政学的リスクを懸念材料に挙げ、「回復は想定よりも遅く、下方リスクが増加している」とする共同声明を採択した。日本の回復は「緩やか」と評価した。米国も懸念している。10月15日の米財務省の為替報告書は「財政再建ペースは慎重に策定することが重要」と指摘し、金融政策は「行き過ぎた財政再建を穴埋めできず、構造改革の代替にもならない」との表現を盛り込んでいる。(つづく)
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