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2014-10-27 19:42

イランの切り札、バーンズ元米国務副長官

川上 高司  拓殖大学教授
 米国の対イラン外交の要であったウイリアム・バーンズ国務副長官が10月24日退職した。イランとの核交渉はまだ道半ばである。関係者はみな、イランとの交渉が途切れるのではないかと心配した。彼ほどイラン側から信頼されている外交官は他にはいないからである。バーンズ氏の存在は大きかった。

 バーンズ氏の外交力にはだれもが一目おいており、彼自身多くの尊敬を集めている。アメリカ政界の重鎮であるブレント・スコウクロフト氏は「たいてい国務副長官はどこで何しているかがすぐニュースになる。だが彼の動向は全く報道されず、だれにもわからない」と評する。バーンズ氏ほどバックチャンネルでの交渉に長けている人物はいない、というのだ。しかも物腰は穏やかで謙虚、その実自国の国益は最大限追求するという、手強い交渉相手である。だからこそ共和党政権でも民主党政権でも常に外交の現場で活躍してきた。

 レーガン政権の時に外交の現場に登場し、イラン・コントラ事件ではあまりにも若すぎて、問題視もされなかった。父ブッシュ政権時代には国務省で政策の立案に携わり、クリントン政権ではオルブライト国務長官に仕えた。子ブッシュ政権ではパウエル国務長官の下中東担当に任命されたものの、政権はイラク戦争に邁進し、外交どころではなく、「人生最悪の時期」となり、ライス国務長官になるとバーンズ氏はロシア大使に就任した。

 そしてオバマ政権になり、イランとの外交を任されることになるが、持ち前の外交力を発揮してアメリカとイランの外交関係を一気に改善へと導いた。バーンズ氏の外交方針は一貫している。「外交とはとどのまつり、人と人のつながりなのだ」というのが、彼の外交官キャリアを貫く信念である。バーンズ氏は、退職したものの引き続きイランとの核交渉の協議に関わっていくという。もしイランとの核交渉がまとまったら、それはまさしくバーンズ氏の功績といえよう。
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