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2014-10-15 09:54

(連載2)日米防衛協力指針の中間報告について

角田 勝彦  団体役員、元大使
 集団的自衛権に関しては「日本と密接な関係にある国に対する武力攻撃が発生し、日本の武力行使が許容される場合」の日米間の協力について、7月の閣議決定の内容を「適切に反映」させると明記し、行使は可能との立場を鮮明にした。具体的な協力内容には触れず、「最終報告で詳しく説明する」と記すにとどめているが、例えば、「周辺事態」の削除がある。これまでは日米協力の場面を(1)平時、(2)周辺事態、(3)日本が武力攻撃された有事、の3つに区分していたが、中間報告では武力攻撃に至らない「グレーゾーン事態」を含め「平時から緊急事態まで切れ目のない形」で対応する必要性を唱え、区分を削除した。自衛隊の対米支援で地理的制約を外し、活動範囲や任務を飛躍的に拡大させる方向性が明確になった、と批判されている。前述のNHK番組で、地理的制約撤廃に「民主党の福山哲郎政調会長は「立憲主義、法治国家として非常に問題」と批判した。

 集団安全保障関係では、「両国がより広く寄与する」「三カ国間および多国間の安全保障、防衛協力を推進する」とも強調し、活動内容として武器・弾薬などの提供を念頭に置いた「後方支援」や、海上での機雷掃海を想定しているとみられる「海洋安全保障」などを挙げた。1997年のガイドラインの下で日米の安保協力は、インド洋での給油、イラク復興支援、海賊対処、災害救援など、世界規模に拡大している。国際協力の必要性を否定するものではないが、集団的自衛権と集団安全保障は分けて考えねばならない。日米安保条約は日本の自衛力向上を目指したものであり、これに、結果としてはともかく、求めて「公共財」的性格を付与するのは行き過ぎだろう。日本国憲法上も、問題がある。

 例えば、イラク戦争初期の2003年12月から09年2月まで行なわれた自衛隊イラク派遣について、名古屋高裁は、平成20年(2008年)4月17日、「自衛隊の活動、特に航空自衛隊がイラクで現在行っている米兵等の輸送活動は、他国の武力行使と一体化したものであり、イラク特措法2条2項、同3項、かつ憲法9条1項に違反する」と判決を言い渡した(5月2日確定)。11月28日 安全保障会議は派遣輸送航空隊の撤収を決定し、防衛省は輸送活動の終結と撤収業務隊の編成命令を発出している。

 要するに、日本が「世界の警察官(保安官の名の方が良い)」の助手になるのが妥当かどうかには、集団的自衛権と別の議論が必要である。今回のガイドライン改定で「日米同盟のグローバルな性質を反映するため、協力の範囲を拡大する」と、ついでに盛り込んで良い問題ではないのである。(おわり)
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