国際問題 外交問題 国際政治|e-論壇「百花斉放」
ホーム  新規投稿 
検索 
お問合わせ 
2014-10-15 14:27

(連載1)日本は常任理事国入りよりも国連安保理改革を重視せよ

河村  洋  外交評論家
 小泉政権期に盛り上がった国連安全保障理事会の常任理事国入りの運動は失敗に終わったが、日本はその希望をまだ捨てていない。安倍晋三首相は9月26日の国連総会での演説で、日本は常任理事国入りを追求し続けると明言した。そうした「ネバー・ギブアップ」の姿勢は称賛するが、それが日本にとって価値のあるものなのだろうか?安全保障理事会の基本的な問題は、日本とドイツの復権ではなく、集団安全保障の意思決定を阻む拒否権の是正である。よって日本が提案するなら、何か国連安保理の機能不全を解決するものにすべきであって、自らが既存の五大国に続く6番目か、7番目の大国になるというものだけならあまり意味はない。

 実を言うと小泉政権が常任理事国入りを目指しながら結局は果たせなかった時に、私は愛国的な情熱の真っ只中にいた。当時世界第2位の経済大国であった日本なら、政治大国にもステップ・アップして当然だ、と何の疑いもなく信じていた。しかしそれから時が過ぎ、今後も常任理事国入りを目指し続けることが本当に日本の国益に適うのか、疑問視するようになった。大々的なロビー活動には膨大な資金と労力を要する。これまで日本は、アジアおよびアフリカ諸国にばらまき援助を与えて、彼らのご機嫌を取り込もうとしてきた。

 ブラジルやインドのような地域大国とも共同で常任理事国入りを申請しようした。日本、ドイツ、ブラジル、インドでG4を構成したのは、そのためであった。しかしブラジルやインドのような地域大国が世界規模の責任を受け入れる用意ができているのかはきわめて疑わしい。地域のバランスがそれほど重要であれば、アフリカ連合が常任理事国を要求するのも当然である。本来なら立場が異なるはずのアメリカと中国がそろってG4の常任理事国入りに反対票を投じたのも、不思議ではない。さらに、日本が常任理事国入りの希望を持ち続けていることが中国のプロパガンダの格好の標的となっている。

 安倍氏の演説からほどなくして、中国の王毅外相は国連総会の全参加者に対して「来年は、日本の軍国主義に対する中国の勝利から70周年に当たる」と念を押した。日本が中国の拒否権を乗り越えられるなら常任理事国入りを訴えるだけの価値はある。しかし、日本がどんなに努力しても、中国がその度に拒否権を行使するのを阻止できないとすれば、日本の努力は、歴史認識をめぐる中国の新たなネガティブ・キャンペーンの標的とされるでだけあろう。毎日新聞が9月27日付けの社説で述べているように、「日本を安全保障理事会の常任理事国にするために国連憲章を変えようなどという気運は全く見られない」のが実態である。(つづく)
お名前は本名、またはそれに準ずる自然な呼称の筆名での記載をお願いします。
下記の例を参考にして、なるべく具体的に(固有名詞歓迎)お書き下さい。
(例)会社員、公務員、自営業、団体役員、会社役員、大学教授、高校教員、大学生、医師、主婦、農業、無職 等
メールアドレスは公開されません。
ただし、各投稿者の投稿履歴は投稿時のメールアドレスにより抽出されます。
投稿記事を修正・削除する場合、本人確認のため必要となります。半角10文字以内でご記入下さい。
e-論壇投稿の際の注意事項

1.投稿はいったん管理者の元へ送信され、その確認を経てから掲載されます。
なお、管理者の判断によっては、掲載するe-論壇を『百花斉放』から他のe-論壇『議論百出』または『百家争鳴』のいずれかに振り替えることがありますので、予めご了承ください。

2.投稿された文章は、編集上の都合により、その趣旨を変えない範囲内で、改行や加除修正などの一定の編集ないし修正を施すことがありますので、予めご了承ください。

3.なお、下記に該当する投稿は、掲載をお断りすることがありますので、予めご了承ください。

(1)公序良俗に反する内容の投稿
(2)名誉や社会的信用を毀損するなど、他人に不快感や精神的な損害を与える投稿
(3)他人の知的所有権を侵害する投稿
(4)宣伝や広告に関する投稿
(5)議論を裏付ける根拠がはっきりせず、あるいは論旨が不明である投稿
(6)実質的に同工異曲の投稿が繰り返し投稿される場合
(7)管理者が掲載を不適切と判断するその他の理由のある投稿


4.なお、いったん投稿され、掲載された原稿の撤回(全部削除) は、原則として認めません。
とくに、他人のレスポンス投稿が付いたものは、以後部分的であるか、全部的であるかを問わず、いかなる削除も、修正もいっさい認めません。ただし、部分的な修正については、それを必要とする事情に特別の理由があると編集部で認定される場合は、この限りでありません。

5.投稿者は、投稿された内容及びこれに含まれる知的財産権(著作権法第21条ないし第28条に規定される権利を含む)およびその他の権利(第三者に対して再許諾する権利を含む)につき、それらをe-論壇運営者に対し無償で譲渡することを承諾し、e-論壇運営者あるいはその指定する者に対して、著作者人格権を行使しないことを承諾するものとします。

6.投稿者は、投稿された内容をその後他所において発表する場合は、その内容の出所が当e-論壇であることを明記してください。

 注意事項に同意して、投稿する
記事一覧へ戻る
公益財団法人日本国際フォーラム