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2014-09-30 10:57

(連載1)本腰が入るテロとの戦い

角田 勝彦  団体役員、元大使
 ロシアのラブロフ外相は9月27日、国連総会の演説で、米国のシリア空爆などについて「主権侵害」「傲慢な政策」と全面的に批判したが、米国が呼びかけた、過激派「イスラム国」へ対処する「有志連合」へは、すでに我が国(人道支援)や中東諸国を含め60カ国以上が参加を表明しており、米国の「世界の警察官」への復帰は、歓迎されているようである。難民も支援している。

 米国は、空爆について「人道的介入(保護する責任)」を表に出さず、直接の脅威に対する「(集団的自衛権を含む)自衛権の行使」と説明している。平和や人権という崇高な目的のためであっても国連などでの手続きを無視して行動することは認められないが、テロ組織とその活動が激増している(米ランド研究所の研究)現在、「イスラム国」の無法ぶりから見て、今回の米国の動きは妥当であろう。シリアのアサド政権も漁夫の利を得て空爆に反対していない。国連の潘基文事務総長も23日の記者会見で、米国などのシリア空爆について、「シリア政府に事前通知された上、地元政府の実効支配の及んでいない場所で行われた」との認識を示し、事実上容認した。おそらく数年以上続く対テロ戦争が開始されたのである。

 ラブロフ外相は「米国は国益を維持するため、どこでも一方的に武力行使する権利を宣言した」と述べ、「米国指導の西側同盟が、主権尊重の原則を守っていない」と主張し、シリア国内での「イスラム国」への攻撃ではシリア政府と協力するよう要求した。ロシアは、これまでも中国とともに安保理決議がないままのシリア空爆に反対していた。ただし、9月24日に行われた安保理の首脳級特別会合では、両国とも、テロ目的で外国に渡航する自国民を処罰する法整備を加盟国に義務づける安保理決議(104カ国の共同提案)への支持を表明している。

 シリアのアサド大統領も「反テロの努力を支持する」として自国領内への空爆を容認している。敵対勢力(「イスラム国」および米国が支援する「自由シリア軍」などの反体制派)の弱体化に貢献するとの考えからだろう。米国もアサド交代を主張していることからアサド政権からの支援要請はない方がかえって良いのだろう。(つづく)
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