国際問題 外交問題 国際政治|e-論壇「百花斉放」
ホーム  新規投稿 
検索 
お問合わせ 
2014-09-18 10:31

従軍慰安婦の一つの「真実」

津守  滋  立命館アジア太平洋大学客員教授
 ここに古山高麗雄の一冊の本がある。『兵隊蟻が歩いた』だ。自ら多くの東南アジアの国の戦線を渡り歩き、ビルマ戦線でも陸軍一等兵として従軍した経験のある著者が、1975年にビルマを再訪して書いた旅行記である。この著書は77年に文藝春秋社より出版されている。そこに慰安婦について、次のような記述がある。

 「朝鮮人慰安婦たちもまた、手錠をかけられた奉国義勇隊のように、人狩りで狩られた者たちである。彼女たちは、挺身隊という名で集められて連れて来られたはずである。朝鮮における挺身隊員狩りは、ビルマにおける義勇隊狩りほどではなかったかも知れないが、大変荒っぽいものであったようだ。内地でも女子挺身隊などといって、女子学生が軍需工場などで働かされたが、いきなり慰安婦にさせられてしまうということはなかった。朝鮮人の女性は、挺身隊の名で徴用され、いやおうなしに慰安婦にさせられた。当時の日本のやり方は、よその国を蹂躙することに、まったく気持ちの呵責はなかったようだ。中国人も、朝鮮人も、南方諸民族も、すべて劣等であり、それゆえに、どんな目にあわせてもよかったのである。・・・日本人は、生きて虜囚となることは恥と心得ても、他民族を蔑視したり、人狩りをすることは恥とは思わないのか、中国の小説を読むと、日本兵のことを東洋鬼と書いてあるが、そうもいいたくなるのであろう。その東洋鬼であることを恥じながら生きるというのはたまったものではないが、どうにもならないのが、あのころの私たちであった」

 きわめて強烈な告白文、告発文である。朝鮮人の慰安婦を「挺身隊という名で徴用され、いやおうなしに慰安婦にさせられた」と述べている。この部分は、当時一般に伝わっていたことを、忠実に描写しているのであろうか。まさか著者が偏見や思い込みで捏造したものではあるまい。朝日新聞の誤報は、誤報として、その騒ぎに取り紛れて、歴史的事実の重みが相対化されるべきではない。

 このような問題は、いずれにしろ日本人にとって不都合、不愉快な話であり、これ以上ほじくり返さなくともよいとも思えるが、問題がこれほど大きくなった以上は、やはり真実を知っておく必要があろう。吉田清治氏の2冊の著書の出版前で、「河野談話」の20年近くも前に、このような話が一般的に出回っていたのであれば、これはこれとして、歴史的事実であるかどうか、粛然と襟を正して検証する必要があろう。気の重い話であるが。
お名前は本名、またはそれに準ずる自然な呼称の筆名での記載をお願いします。
下記の例を参考にして、なるべく具体的に(固有名詞歓迎)お書き下さい。
(例)会社員、公務員、自営業、団体役員、会社役員、大学教授、高校教員、大学生、医師、主婦、農業、無職 等
メールアドレスは公開されません。
ただし、各投稿者の投稿履歴は投稿時のメールアドレスにより抽出されます。
投稿記事を修正・削除する場合、本人確認のため必要となります。半角10文字以内でご記入下さい。
e-論壇投稿の際の注意事項

1.投稿はいったん管理者の元へ送信され、その確認を経てから掲載されます。
なお、管理者の判断によっては、掲載するe-論壇を『百花斉放』から他のe-論壇『議論百出』または『百家争鳴』のいずれかに振り替えることがありますので、予めご了承ください。

2.投稿された文章は、編集上の都合により、その趣旨を変えない範囲内で、改行や加除修正などの一定の編集ないし修正を施すことがありますので、予めご了承ください。

3.なお、下記に該当する投稿は、掲載をお断りすることがありますので、予めご了承ください。

(1)公序良俗に反する内容の投稿
(2)名誉や社会的信用を毀損するなど、他人に不快感や精神的な損害を与える投稿
(3)他人の知的所有権を侵害する投稿
(4)宣伝や広告に関する投稿
(5)議論を裏付ける根拠がはっきりせず、あるいは論旨が不明である投稿
(6)実質的に同工異曲の投稿が繰り返し投稿される場合
(7)管理者が掲載を不適切と判断するその他の理由のある投稿


4.なお、いったん投稿され、掲載された原稿の撤回(全部削除) は、原則として認めません。
とくに、他人のレスポンス投稿が付いたものは、以後部分的であるか、全部的であるかを問わず、いかなる削除も、修正もいっさい認めません。ただし、部分的な修正については、それを必要とする事情に特別の理由があると編集部で認定される場合は、この限りでありません。

5.投稿者は、投稿された内容及びこれに含まれる知的財産権(著作権法第21条ないし第28条に規定される権利を含む)およびその他の権利(第三者に対して再許諾する権利を含む)につき、それらをe-論壇運営者に対し無償で譲渡することを承諾し、e-論壇運営者あるいはその指定する者に対して、著作者人格権を行使しないことを承諾するものとします。

6.投稿者は、投稿された内容をその後他所において発表する場合は、その内容の出所が当e-論壇であることを明記してください。

 注意事項に同意して、投稿する
記事一覧へ戻る
公益財団法人日本国際フォーラム