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2014-08-31 11:06

「モダーン国家とポストモダーン国家」論再考

津守  滋  立命館アジア太平洋大学客員教授
 先に本論壇に投稿した拙稿(「日本はモダーン国家か、ポストモダーン国家か」)を補足かたがた、この問題について改めて考えてみたい。ちなみに筆者は、モダーン国家を「ガラ型国家」と呼びたいが、やや奇をてらうきらいがあるので、ここでは控えておく。

 ウクライナ(及びこれをめぐるロシアの対応)や中国の動向に関連して、この問題に焦点が当てられているが、「モダニズム世界とポストモダニズム世界が衝突する場合、ポストモダニズムの原理のみでは対応できない。それが世界の冷酷な現実だ」という袴田茂樹氏の意見(『外交』Vol.25)は、現実を直視した場合、的を射ている。先に紹介したミードの論考も、ほぼこれと軌を一にした意見である。そして「ポストモダーン国家が、モダーン国家に対抗する際、コモンセンスなる価値を損なう手段・方法にて対抗することはできない、というジレンマに直面する」とする西尾亘氏の分析(8月11日付け本論壇)も首肯しうる。

 他方ウクライナ危機に関連して、「ポスト・モダニズムの挫折」とする見方(例えば鈴木美勝氏,『外交』Vol.25 )があるが、にわかには賛成しがたい。もしここでポストモダニズムが「挫折」してしまうのであれば、ロシアや中国に、国際法遵守や平和的解決をいくら説いても無意味ということになろう。もっとも、今更いくらロシアに国際法を説いたところで、クリミアを元に戻す気はないだろうし、中国に膨張主義をやめろといっても、馬の耳に念仏かもしれない。

 しかし、にも関わらず繰り返しロシアや中国に、国際秩序を維持・強化するために戦後各国が営々と築づき上げてきた理念を執拗に説き続ける必要がある。こうした戦後の貴重な財産は、これを簡単に捨て去るのは余りにも惜しいし、そうでなければ、彼らの不法行為を追認することにもなる。そしてその任務は持つのは、日本を含めポストモダーンの国家をおいてほかにない。特に多元的な価値を包摂するポストモダニズムの重要な原理の一つの「共生」が、日本文明に深く根づいた価値観であるとすれば(梅原猛)、日本の役割は特別大きいと言うべきであろう。
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