国際問題 外交問題 国際政治|e-論壇「百花斉放」
ホーム  新規投稿 
検索 
お問合わせ 
2014-07-31 22:22

(連載1)アジア諸国は中国の大国気取りに警戒心

河村 洋  外交評論家
今年5月のCICA(アジア相互協力信頼醸成措置会議)において中国の習近平国家主席が「アジア人によるアジア」という演説で物議を醸した際に、私は我が耳を疑った。この演説の根底にある発想は戦中の日本が主張した大東亜共栄圏と二重写しだったからである。中国の海洋拡張主義と大国意識の高まりに近隣諸国の懸念が高まっていることから、習氏の「アジア人によるアジア」演説は国際社会では否定的に受け止められている。第二次大戦中の日本と現代の中国の間には数多くの共通点がある。そうした共通点について述べてみたい。

 地政学の観点から言えば、大戦中の日本も現代の中国も反欧米である。戦中の日本は脱植民地化と白人支配からの解放を掲げ、ヨーロッパとアメリカの勢力をアジアから駆逐しようとした。しかし日帝自体が植民地帝国であり、アジア人にとっては白いサーヒブ(sahib:ヒンディー語で「ご主人様」)も黄色いサーヒブも根本的に大きな違いはなかった。今日の中国もアジアにおけるアメリカのプレゼンスを追い払い、そこを自国の勢力圏に収めようとしている点で、変わりはない。

 さらに重要なことに、戦中の日本も現在の中国も自由主義世界秩序に異を唱え、民主主義諸国に対抗するための枢軸を築き上げようとしていることだ。日本はファシスト国家のドイツやイタリアと同盟したが、中国は上海条約機構、BRICS、CICAを利用して西側民主国家に対抗する発言力を得ようとしている。日本がドイツやイタリアと結んだ三国同盟には、共同の戦略立案や作戦が行なえるほどの政策調整能力はなかったが、中国もアメリカとその民主的な同盟諸国に対抗する枢軸の形成には成功していない。

 なによりも、過去と現在のアジアの大国は、いずれも普遍的に受容される自己自身の価値観を持っておらず、それを打ち出して国際公益のために動くということも、できていない。(つづく)
お名前は本名、またはそれに準ずる自然な呼称の筆名での記載をお願いします。
下記の例を参考にして、なるべく具体的に(固有名詞歓迎)お書き下さい。
(例)会社員、公務員、自営業、団体役員、会社役員、大学教授、高校教員、大学生、医師、主婦、農業、無職 等
メールアドレスは公開されません。
ただし、各投稿者の投稿履歴は投稿時のメールアドレスにより抽出されます。
投稿記事を修正・削除する場合、本人確認のため必要となります。半角10文字以内でご記入下さい。
e-論壇投稿の際の注意事項

1.投稿はいったん管理者の元へ送信され、その確認を経てから掲載されます。
なお、管理者の判断によっては、掲載するe-論壇を『百花斉放』から他のe-論壇『議論百出』または『百家争鳴』のいずれかに振り替えることがありますので、予めご了承ください。

2.投稿された文章は、編集上の都合により、その趣旨を変えない範囲内で、改行や加除修正などの一定の編集ないし修正を施すことがありますので、予めご了承ください。

3.なお、下記に該当する投稿は、掲載をお断りすることがありますので、予めご了承ください。

(1)公序良俗に反する内容の投稿
(2)名誉や社会的信用を毀損するなど、他人に不快感や精神的な損害を与える投稿
(3)他人の知的所有権を侵害する投稿
(4)宣伝や広告に関する投稿
(5)議論を裏付ける根拠がはっきりせず、あるいは論旨が不明である投稿
(6)実質的に同工異曲の投稿が繰り返し投稿される場合
(7)管理者が掲載を不適切と判断するその他の理由のある投稿


4.なお、いったん投稿され、掲載された原稿の撤回(全部削除) は、原則として認めません。
とくに、他人のレスポンス投稿が付いたものは、以後部分的であるか、全部的であるかを問わず、いかなる削除も、修正もいっさい認めません。ただし、部分的な修正については、それを必要とする事情に特別の理由があると編集部で認定される場合は、この限りでありません。

5.投稿者は、投稿された内容及びこれに含まれる知的財産権(著作権法第21条ないし第28条に規定される権利を含む)およびその他の権利(第三者に対して再許諾する権利を含む)につき、それらをe-論壇運営者に対し無償で譲渡することを承諾し、e-論壇運営者あるいはその指定する者に対して、著作者人格権を行使しないことを承諾するものとします。

6.投稿者は、投稿された内容をその後他所において発表する場合は、その内容の出所が当e-論壇であることを明記してください。

 注意事項に同意して、投稿する
記事一覧へ戻る
公益財団法人日本国際フォーラム