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2014-06-21 03:28

(連載1)日本は発言の中身とタイミングで勝負せよ

石川 薫  日本国際フォーラム研究本部長
 大統領選挙中の5月25日のウクライナに、欧州安全保障協力機構(OSCE)は(日本人10名を含む)1000人以上の国際監視団を派遣し、当選したポロシェンコ新大統領の正統性にロシアも挑戦できない状況を作った。こうした中、6月17日に日本国際フォーラムは来日中のザニエOSCE事務総長とベア米国OSCE大使を日本国際フォーラムの「外交円卓懇談会」に招き、日本側有識者約30名とOSCEとの対話の場を設定した。私もこの対話に参加したが、OSCEが単に紛争当事者間の意思疎通だけでなく、問題解決の政治的・軍事的ツールとしても機能していることを知り、感ずるところがあった。以下にその所感を述べてみたい。

 かつては冷戦の申し子と揶揄された欧州安全保障会議(CSCE)だったが、「ベルリンの壁」崩壊で民主主義の旗手に変身したことは記憶に新しい。1990年のパリ憲章では「ヴァンクーヴァーからウラジオストックまで我々は米欧の家族であり、民主主義が共通の価値観である」と謳い上げた。ソ連までが民主主義国となったかのごときユーフォリアが舞ったのである。国際ルール作りのための基本的価値観とその方向性はCSCEで決まるかのごとき観さえ呈したと言ってよい。このような状況を前にして日本は危機意識を強め、1992年のCSCEヘルシンキ首脳会議で特別ステータスを獲得し、以後ルール作りへの発言権を確保した。

 当時の本邦紙は「(今後は)利害関係にかかわらずものを言う」との日本代表団関係者の発言を報じたが、もとより発言権の確保は国際ルール作りの第一歩にすぎず、勝負は発言の中身とタイミングで決まる。そのいずれを欠いても説得力ある発言とはなりえず、また逆に言えば説得力ある自由な発言こそが「民主主義」と「法の支配」の基盤をなすことは言うを待たない。

 では、ウクライナ問題の本質である「民主主義」や「法の支配」について、日本政府はこれまでに何を発言してきたのであろうか。これらを踏みにじるロシアの一連の行為に対して、OSCEの場を含めてこれまで日本政府の口からいまひとつ断固とした糾弾の言葉が聞こえてこないような印象を持つのは、筆者の見落としによるものであろうか。(つづく)
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