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2014-05-19 00:31

APEC2014に便乗して、日中交流を再活性化せよ

池尾 愛子  早稲田大学教授
 アジア太平洋経済協力会議(APEC)は故大来佐武郎日本国際フォーラム初代会長たちの努力が実り、1989年に12のメンバーで発足し、2014年に四半世紀をむかえる。現在の参加メンバーは、この地域の21の国と地域(エコノミー)である。1994年のボゴール(インドネシア)での首脳会議では、「先進エコノミーは2010年までに、途上エコノミーは2020年までに、自由で開かれた貿易と投資を達成する」というボゴール目標が合意され、加盟国によって大切な共通目標とみなされているようだ。拘束力のゆるいフォーラムなので、加盟国によってAPEC自体の理解の仕方に多少の差があるようだが、日本の経済産業省によれば、APECの基本理念は「貿易と投資の自由化」、「ビジネスの円滑化」、「経済・技術協力」であると整理されている。

 APECホスト国を中心に1年間を通じて、アジア太平洋地域の経済問題を中心に幅広いテーマの下、ふつうは非常に多くの会合が開催される。APEC加盟国は年間を通じて、APECの名の下で非常に多くの会議を開催しているといってもよい。2010年に横浜などで開催されたAPEC関連会議の場合、その数は200を軽く超えたと記憶する。中国は、2001年に上海でAPEC諸会議を開催したのに次いで、今年2回目のホスト役を果たす。今年開設されたウェブサイトをみると、APEC、北京や青島のビデオ紹介が掲載され、ホスト国の改めての意気込みが感じられる(http://www.apec-china.org.cn/en/)。

 APEC関連で開催される会合は、首脳、閣僚、実務者、経済人等が関わるものである。2006年のホストはべトナムで、ベトナム戦争終結以来、アメリカ大統領が初めて同国を訪問してハノイでの首脳会合に参加するなど、二国間外交だけでは得難い政治機会を提供した。公式会合の合間に、二国間の会談が行われることもある。5月17-18日にAPEC貿易相会合が開催された折、日中の担当相が会談した。昨年12月26日以来、初めての閣僚会談であると、ちょっとしたニュースになっている。

 ところで、日中間の公的交流あるいは公式の交流は2012年9月から禁止されていると一部から聞いていた。ただし、日本人抜きでの公的実務者による国際会議は中国で開催されていたとも聞くので、関連する研究交流が中国国内で多角的に順調に進んでいたのならば、中国にとって大きな問題ではなかったかもしれない。この間、私の周辺では、個人の資格で研究者として来日し、学会や大学で研究発表をした中国人研究者たちはいる。中国の経済データは有償で利用可能である。政治体制は違っても、経済・金融に関連するデータや事実はお互いに確認し合えるはずである。「政治体制の相違は経済データ上、国有資産の多寡などで表現できるはずで、計量経済分析では政治体制は問題にならない」と主張する計量経済学者もいる。経済・金融のグローバル化が進むなか、近隣諸国間の公的交流・組織的交流、データや事実に基づいた研究交流すら積極的に行われないのであれば、重要な経済関係にも支障をきたす恐れがあるのではないか。APEC2014に便乗してもよい。研究交流など経済関係以外でも、日中交流などが再活性化されることを祈りたい。
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