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2014-04-14 06:05

公明幹部から集団的自衛権容認論

杉浦 正章  政治評論家
 広辞苑に「やぶさか」の使用例として「過ちを認めるにやぶさかでない」と挙げられているが、公明党もどうやら過ちを認めはじめたようだ。集団的自衛権の容認について党幹部から4月13日「やぶさかでない」という発言が飛び出した。もともと同党内は幹部や若手議員らの間で「限定容認ならやむを得ない」という空気がただよっていたが、その内実の一端を垣間見せたことになる。公明党代表・山口那津男は例によって火消しに懸命だが、孤立化の様相すら見せ始めた。13日のNHKの日曜討論は、集団的自衛権容認絶対反対論の解説委員・島田敏男の司会だから、例によって巧みに反対方向に誘導されるかと思ったが、自民、維新、みんな各党が限定容認の方向を一層鮮明にした形となった。共産や社民などの教条主義的な反対論は毎度のことだが、民主党の安保調査会長・北沢俊美は防衛大臣経験者とも思えない粗雑な反対論を展開した。集団的自衛権の容認に向けての根拠である極東における安全保障環境の悪化について「安倍首相とその取り巻きの不用意な発言が原因」と断定したのだ。こればかりは「冗談ではない」と言いたい。全ては民主党政権時代の失政が原因であることを棚上げにしている。首相・野田佳彦の性急な尖閣国有化で中国を激怒させてしまったことが全ての発端である。

 注目すべきは親安倍の渡辺喜美が辞任したみんなの党だったが、副幹事長・三谷英弘は「東アジア情勢が緊張感を高めているなかで、絵そらごとの議論で国を守れるか、という観点で考えるべきだ。政府答弁などに照らしても集団的自衛権の行使は何ら否定されず、発動要件などを国会で議論すべきだ」と堂々たる容認論を展開させた。維新の政調会長代理・桜内文城は、「憲法が目指すのは国民の生命、自由、財産を守ることだ。日本の安全保障環境は様変わりしており、個別的であれ集団的であれ自衛権の行使を認めるよう、憲法解釈を変えなければならない」と述べ、今週中に党として容認の方針を打ち出すことを明らかにした。

 こうして自民、維新、みんなによる「容認の構図」が一層鮮明となった。これは秋の臨時国会での関連法案成立への流れが確定的になることを意味する。問題は政権与党の公明党の発言だが、政調会長代理・上田勇は冒頭の「やぶさかでない」発言をした。上田は「憲法解釈をまったく変えてはいけないということではないが。すぐに変えられる、簡単に変えられるものではないというのも事実だ。だから、内閣や国会でも幅広い議論をし、コンセンサスが得られれば、解釈を変更することはやぶさかではない。その際にも、具体的な事象に即した議論でないといけない。観念的な議論をしても仕方がない。」と言明したのだ。まさに自民党副総裁・高村正彦が主張している、個別事例に基づく公明党との調整に応ずる方向を示したことになる。党幹部の公式発言としては初めての容認論だが、ちゃんと論理が組み上がっていることからみて、明らかに党内的にもある程度の根回し済みの発言と受け取れる。

 ところが山口は、この発言の相談を受けなかったとみえて、同日青森で「ここは慎重に考える必要がある。何十年と一貫してとられてきた国の方針をもし変えようとするなら、なぜ変える必要があるのか、どう変わっていくのか、変えた結果が国民や同盟国のアメリカ、近隣諸国、国際社会にどのような影響を与えていくのか、というところを慎重に、広く、深く議論する必要があると思う」と、相変わらずの慎重論を崩さなかった。しかし上田発言が意味するものは、山口の党内における立場が揺らいでいることを意味する。第四世代と呼ばれる若手議員らは容認論が強いし、肝心の容認の閣議決定に署名する国土交通相・太田昭宏は、はやばやと2月12日の国会答弁で「すべて首相が答えていることに同意している」と発言。喜んだ安倍は同日夜に太田を銀座の寿司屋に招いて「太田さんはすばらしい答弁をしていただいている」と持ち上げたほどだ。雑誌は早くも「山口降ろし」と報じているが、山口一人が突っ張ると本当にそうなりかねない側面がある。
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