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2014-04-04 19:46

(連載1)朝鮮統一の可能性と日本の選択

堀口 松城  日本大学客員教授
 朝鮮統一の可能性について、つい最近まではほとんどないと思われてきた。その最大の理由は、中国の朝鮮統一に対する態度である。それは、統一があるとすれば韓国主導で行われることになろうが、仮に統一された朝鮮が米国との同盟関係を維持し、米軍が中国との国境である鴨緑江まで展開することになれば、中国の安全保障上大きな問題となるため、南北分断の現状維持を変える訳にはいかないことであった。

 ところが、昨年12月、北朝鮮の金正恩体制を支える叔父でナンバー・ツーの張成沢が粛清されたが、彼はこれまで対中国関係を取り仕切ってきただけに、その粛清が中国指導部に北朝鮮の将来を懸念させ、北朝鮮との関係を見直す機会を与えたことは想像に難くない。中国としては、北朝鮮体制の先行きに自信が持てないとなると、韓国を主体とした朝鮮統一の可能性に備える必要が出てくるが、中国にとって韓国主体の統一を受け入れ得る絶対条件は、将来にわたって米軍の鴨緑江への展開がないよう確保することであり、そのためには、韓国に米国との同盟関係を解消させることがどうしても必要になってくる。

 朝鮮と中国との長い歴史をみると、朝鮮は陸続きであるがゆえに有史以来中国大陸に現れる諸王朝の絶えざる脅威に晒され、多くの苦難を耐え忍んできた。これに対し、朝鮮にとって米国は、1945年の独立以来ベネファクターであり続けているので、韓国がこの両国との上記の歴史にもかかわらず、米国を捨てて中国を選ぶことは考えられないとする見方もある。

 しかし、朝鮮統一の実現は、朝鮮半島北半分の急速な復興の見通しとあいまち、75百万人の人口を有する経済大国の出現を意味するものである。現在直面している政治的、経済的、社会的諸問題は一気に解決され、さらに飛躍することも考えられる。とすれば、中国との関係も、かつてのような冊封体制が国連の下では考えられないことでもあり、韓国は南北統一か、米韓同盟か、のぎりぎりの選択をせまられた場合には、前者を選ぶ可能性は十分ありえよう。(つづく)
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