国際問題 外交問題 国際政治|e-論壇「百花斉放」
ホーム  新規投稿 
検索 
お問合わせ 
2014-03-29 13:37

国際秩序に挑戦するロシア

船田 元  元経済企画庁長官
 冬季オリンピックとパラリンピックが開催されたソチは、クリミア半島の約300キロ東に位置する。また第二次世界大戦終結後の世界秩序を決める会議が開かれたヤルタは、まさにクリミア半島の只中にある。旧ソ連の崩壊後にウクライナは独立したが、その南部のクリミア半島は、気候も比較的温暖なため、引き続き、旧ソ連時代以来の有数な保養地になっている。またここはロシア系住民も多く住んでいて、ロシアとの関係は密接である。

 ウクライナでは以前から、親露派のヤヌコビッチ政権に対する国民の不満が溜まっていたが、EU加盟の是非をめぐって国内対立が激しくなり、ヤヌコビッチ政権は打倒された。一気にEUに接近しようとする新政権に危機感を抱いたプーチン大統領は、自警部隊を装うロシア軍の圧力のもとで、クリミア自治共和国のロシア編入の是非を問う住民投票を強行した。投票の結果はロシアへの編入を支持するもので、プーチン大統領は手際良く編入手続きを進めた。同大統領は「国際法上何の問題もない」と強調するが、そもそもウクライナ憲法には「領土の分割には国民投票の承認が必要」と書いてあり、クリミア半島のみの投票は、明らかに憲法違反であり、プーチン大統領の主張は間違っている。

 この動きに対して欧米諸国は反発して、アメリカをはじめとして経済制裁を矢継ぎ早やに実施している。日本も、安倍総理とプーチン大統領の緊密な友好関係はあるものの、しばらくは欧米の動きに同調せざるを得ない。ここで気になるのは、欧米の間で早くも足並みの乱れが生じはじめていることだ。EU諸国はロシアとの経済的相互依存の関係が強い。中でもドイツは、ロシアとの取引をしている企業が7000社近くあるという。また同国の天然ガス輸入の3分の1はロシアからという。「本気で制裁」となれば、ドイツ経済は確実に打撃を受ける。

 もう一つ気になるのは、今回の対立が長期化して、新たな「東西冷戦」がはじまるのではないかとの懸念である。この夏ソチで開催予定の先進主要国サミット(G8)は開けなくなる公算が大きい。しかし、ここは、多少の犠牲を払っても、「国際秩序を力ずくで変えようとする行為は許さない」との明確なメッセージを、国際社会はロシアに送り続けなければいけない。いまが我慢のしどころである。
お名前は本名、またはそれに準ずる自然な呼称の筆名での記載をお願いします。
下記の例を参考にして、なるべく具体的に(固有名詞歓迎)お書き下さい。
(例)会社員、公務員、自営業、団体役員、会社役員、大学教授、高校教員、大学生、医師、主婦、農業、無職 等
メールアドレスは公開されません。
ただし、各投稿者の投稿履歴は投稿時のメールアドレスにより抽出されます。
投稿記事を修正・削除する場合、本人確認のため必要となります。半角10文字以内でご記入下さい。
e-論壇投稿の際の注意事項

1.投稿はいったん管理者の元へ送信され、その確認を経てから掲載されます。
なお、管理者の判断によっては、掲載するe-論壇を『百花斉放』から他のe-論壇『議論百出』または『百家争鳴』のいずれかに振り替えることがありますので、予めご了承ください。

2.投稿された文章は、編集上の都合により、その趣旨を変えない範囲内で、改行や加除修正などの一定の編集ないし修正を施すことがありますので、予めご了承ください。

3.なお、下記に該当する投稿は、掲載をお断りすることがありますので、予めご了承ください。

(1)公序良俗に反する内容の投稿
(2)名誉や社会的信用を毀損するなど、他人に不快感や精神的な損害を与える投稿
(3)他人の知的所有権を侵害する投稿
(4)宣伝や広告に関する投稿
(5)議論を裏付ける根拠がはっきりせず、あるいは論旨が不明である投稿
(6)実質的に同工異曲の投稿が繰り返し投稿される場合
(7)管理者が掲載を不適切と判断するその他の理由のある投稿


4.なお、いったん投稿され、掲載された原稿の撤回(全部削除) は、原則として認めません。
とくに、他人のレスポンス投稿が付いたものは、以後部分的であるか、全部的であるかを問わず、いかなる削除も、修正もいっさい認めません。ただし、部分的な修正については、それを必要とする事情に特別の理由があると編集部で認定される場合は、この限りでありません。

5.投稿者は、投稿された内容及びこれに含まれる知的財産権(著作権法第21条ないし第28条に規定される権利を含む)およびその他の権利(第三者に対して再許諾する権利を含む)につき、それらをe-論壇運営者に対し無償で譲渡することを承諾し、e-論壇運営者あるいはその指定する者に対して、著作者人格権を行使しないことを承諾するものとします。

6.投稿者は、投稿された内容をその後他所において発表する場合は、その内容の出所が当e-論壇であることを明記してください。

 注意事項に同意して、投稿する
記事一覧へ戻る
公益財団法人日本国際フォーラム