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2014-03-17 06:51

日米韓ハーグ会談の実現可能性強まる

杉浦 正章  政治評論家
 筆者が3月14日朝に報じた「日米韓首脳会談へ機運」の正確さは、同日の首相・安倍晋三の国会答弁と韓国大統領・朴槿恵の歓迎声明で早くも立証された。問題は、会談が想定されるハーグの核サミットまであと1週間と迫る中で、累卵(るいらん)の構図であることは確かだ。全ては、韓国側がこのポジティブな局面をぶち壊さないかどうかにかかっている。筆者は、朴は国内世論の動向を見極めつつ最終判断を下すことになるが、まず出来上がった構図をばらけさす事はないと見る。なぜなら、オバマも絡んでいる事が確実視されるからだ。朴はオバマの信頼を失ってまで「累卵」を壊せば、災いは確実に吾が身に降りかかることを知っている。近く発表となる公算が高い。事の展開を検証・解明すればそれがよく分かる。まずホワイト・ハウスは、さる6日、前米大統領補佐官(国家安全保障担当)のドニロンに講演させて、「オバマ大統領は今月安倍晋三首相と朴槿恵大統領にオランダのハーグで会う機会がある。もしかしたらそこで2人を引き合わせることができるかもしれない」と観測気球を上げた。同時に政府筋によると、オバマがウクライナ問題で安倍に電話をかけた7日に、「ハーグで日米韓首脳会談を開催しよう」と提案したのだ。安倍はこれを受諾する意向を伝えると同時に、「朴の凝り固まった反日姿勢を米側も解きほぐして欲しい」と要望した。これを受けて日米外交筋によると、オバマが自ら朴に電話をした可能性が高いという。

 こうした下地の上に、12日に外務次官・斎木昭隆と韓国外交省第1次官・趙太庸(チョ・テヨン)との会談が行われた。当初、韓国側が用意した斎木への日程は晩餐会や韓国首脳との会談も含め2日間の予定だったが、斎木は急きょ日程を繰り上げて、同日中に帰国した。これを見た日韓両国のマスコミは、浅薄にも「またか」とばかりに、「物別れ」と報じた。しかし、逆だったのである。話がとんとん拍子に進みすぎて、斎木は「早く帰って首相・安倍晋三に報告して、続く段取りを展開した方がよい」と判断したのだ。もちろん「続く段取り」とは安部が国会答弁で河野談話継承を表明するというものであり、韓国側もオバマからの強い意向があり、「これを見た上で判断する」と回答せざるを得なかったのだ。急きょ帰国した斎木は、13日午後1時56分から1時間アジア大洋州局長・伊原純一をまじえて安部と会談、国会答弁の内容を綿密に打ち合わせた。その後斎木は、自民党日韓議連首脳とも会談して、事態を報告したが、その内容を某筋から筆者が聞いたのは、同日深夜である。もちろん取材源など明らかに出来ないが、実は深い情報があったのだ。一方安倍は、質問者は自民党参院議員の有村治子とした。有村は総裁選挙で安部を支持して、一定票を集めた。そのご褒美に超重要答弁の質問者にしてもらったのだ。

 こうして安倍は14日午前の参院予算委員会の答弁で「歴史認識については、戦後50周年の機会には村山談話、60周年の機会には小泉談話が出されている。安倍内閣としては、これらの談話を含め、歴史認識に関する歴代内閣の立場を全体として引き継いでいる。慰安婦問題については、筆舌に尽くしがたいつらい思いをされた方々のことを思い、非常に心が痛む。この点についての思いは、私も歴代総理と変わりはない。この問題についてはいわゆる河野談話がある。この談話は官房長官の談話ではあるが、安倍内閣でそれを見直すことは考えていない。歴史に対して我々は謙虚でなければならないと考えている。歴史問題は政治・外交問題化されるべきものではない。歴史の研究は有識者や専門家の手に委ねるべきだと考えている」と答弁した。事前にぬかりなく外務省は、在日韓国大使館に対して、「午前の首相の国会答弁を注視して欲しい」と連絡した。大使館が至急報で演説内容全文を本国に打電したのは言うまでもない。これを待ちかねたかのように、朴は声明を発表し、「安倍首相が村山談話と河野談話を継承するという立場を発表したことを幸いに思う」と表明した。

 こうしてオバマの仲介が奏功しそうな雰囲気となっている。なぜ朴がばらけさせる構図にないかと言えば、無理にオバマ訪韓を求めておいて、会談をぶち壊せば、オバマの顔に泥を塗ることになるからだ。また朴の意固地なまでの反日路線に対して、国内に批判が台頭している上に、日韓の冷え込みで経済が悪化の一途を辿っていることも挙げられる。問題は会談内容の事前調整をめぐって韓国側が、ぶちこわしの口実を作るかどうかだが、3国首脳の会談で細部に踏み込むようなことはあるまい。問題は政権発足以来1年半会談が実現していない状況を、一度打破する必要があるのだ。北朝鮮をけん制するためにも、2国間問題に重点を置くよりも、極東の安全保障での協力関係再構築があれば、会談は十分成功なのである。韓国紙『中央日報』は、筆者の書いた内容をなぞるがごとく「安倍首相の靖国神社参拝後、韓米が日本を攻める構図だったが、現在は日米対韓国の様相となっている」と報じているが、韓国紙にしてはよく理解できている。日本のマスコミではようやくTBSが17日朝、「日米韓首脳会談実現」と先陣を切って報道した。
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