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2014-03-03 07:07

河野談話検証で、日韓外交未知の水域へ

杉浦 正章  政治評論家
 どうも「朴槿恵言いつけ外交」の命名者としては、今度の朴の発言をどう形容するかだが、当てはまる言葉は「強請(ごうせい)外交」であろうか。頑迷固陋な老女によるゆすり、たかりじみているからだ。韓国政府筋がリークしている発言に含まれたメッセージなるものを分析すれば、するほど、そう読めるのだ。要するに、慰安婦だかなんだか得体の知れない女性に金を払って、首相・安倍晋三が陳謝せよというのだ。法的にも非を認めよというのだ。これでは温和な安倍が頭にくるのも無理はない。朴発言に先立って官房長官・菅義偉に命じて、隣のテンション民族が怒髪天をつくのを承知で「河野談話の再検証」を命じたのは正解だった。図に当たって、韓国メディアは頭から湯気を立てて、卒倒しそうになって怒っている。韓国政府筋が日本のマスコミ数社に漏らしている朴発言の「狙い」は、(1)最低でも村山・河野談話の踏襲、(2)安倍の陳謝、(3)日本政府による慰安婦に対す賠償だろう。そこで、朴が3月1日の「3.1独立運動」記念式典での演説に含めたメッセージをあえて読み解けば、まず朴は「痛ましい歴史にもかかわらず、韓日両国が関係を発展させることができたのは、村山談話や河野談話などを通じて植民地支配と侵略を反省し、未来に進もうとしてきた歴史認識があったからだ」と述べた。安倍が最低でも村山・河野談話の踏襲を正式に表明しなければならないと要求しているのだ。

 次ぎに「過ちを認められない指導者は、新しい未来を開けない」と強調した。これは安倍に対して、全てのスタートは誤りを陳謝してから始まると言っているのであろう。また「55人しか残っていないおばあさんたちの傷は当然、癒やされなければならない」と述べた。明らかに慰安婦なるものへの国家賠償を求めたものであろう。朴がなぜこの時点であえてメッセージを発信して、交渉のたたき台とも言える発言をしたかと言えば、調停努力を始めた米国へのアリバイ作りのためだろう。国務長官ケリーは、2月の訪韓で朴の「過度な歴史認識」への傾斜に警告を発して、日本との融和を求めているからだ。しかし、村山・河野談話の踏襲は、既に官房長官・菅義偉も外相・岸田文男も国会で明言しており、少なくとも交渉のテーマにはなり得るだろう。ところが、慰安婦の賠償請求について日本は「国交正常化時に結んだ請求権協定で解決済み」との立場であり、安倍の陳謝も一体何度謝ればいいのかということであろう。韓国で政権が代わる度に時の大統領が、国民の人気取りを目指して日本の首相を謝らせようとするパターンは、いくら恨(はん)民族の特色とは言え、願い下げだろう。だいいち謝ったからといって、そのときは納得しても、また暫くすればぶり返すに決まっている。もうこの国民の恨み節はほとんどビョーキの域と理解するしかない。

 その慰安婦強制連行を陳謝した河野談話のいい加減さが、ここにきてクローズアップした。宮沢内閣で河野談話に携わった当時の官房副長官・石原信雄の2月20日の国会での「無念の証言」が、官房長官・河野洋平の如何様(いかさま)師的な側面を浮き彫りにしたのだ。石原は、政府や日本軍の強制連行を裏付ける資料はなかったことを明らかにすると共に、「元慰安婦の証言だけで強制連行を認めた談話になった。その裏付け捜査は行われていない」と内実を暴露したのだ。加えて河野と韓国側が談話の表現ですりあわせた可能性にまで言及した。いくら何でも首相に次ぐナンバー2の官房長官が「国を売った」と受け取れる行為をしていたのであり、これは政府首脳による戦後最大の背信行為になり得る方向を示していると言ってもよい。検証が行われて当然である。

 要するに、慰安婦問題の最大のきっかけは1992年に朝日新聞が「主として朝鮮人女性を挺身隊の名で強制連行した」と大誤報したことに端を発する。戦時勤労動員制度の「女子挺身隊」をその名称から戦前の用語を知らない記者が邪推して、「慰安婦」と誤って判断、報じたのだ。「強制連行の有無が最大の争点となった」と、韓国が騒ぎ始めた。これを受けてその翌年の93年にねつ造じみた河野談話を早計にも発表して、ここに外交史上まれに見る虚構が出来上がったのだ。信頼すべき証言があった以上「検証」を行うことは、歴史に禍根を残さないためにも必要不可欠のことであろう。この安倍政権の「検証」の意思表明は、反日を反共と共に建国の国家理念として確立している韓国が、一種の“ゆすり”に出れば、日本が“低頭”してきた戦後の日韓関係史が、変質することを意味する。つまり、戦後70年、日韓条約締結50年を契機に日韓関係は、主張が真っ向からぶつかり合う可能性を秘めた濃霧の水域に突入するのだ。これは北朝鮮が核爆弾の小型化に成功しつつあるという危険極まりない極東情勢の中で、就任以来「対日歴史認識要求」という国内対策で、国民の支持率を引きつけている朴槿恵の、葦の穴から空を見る狭量外交に全て起因するとしか言いようがない。
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