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2014-02-03 06:43

第2次小泉劇場は細川大敗北で幕

杉浦 正章  政治評論家
 「仁王経」に「盛者必衰、実者必虚」とある。盛んな者はやがて衰え、満ちている者はやがてからっぽになるという教えである。『平家物語』の冒頭「沙羅双樹の花の色、盛者必衰の理(ことわり)をあらわす」はこの仁王経にに基づいたものである。日本人は70歳以上の高齢者ともなれば、多かれ少なかれこの哲学に気付くものが多いが、どうしても気付かない種類の人間がいる。その典型は、小泉純一郎、細川護煕、籾井勝人だ。これを称して「平成3莫迦(ばか)大将」という。元首相も含まれているから、「馬鹿」と称するにはお恐れ多いので、莫迦としたが、莫迦はもともとは仏教用語で、道理を知らぬ迷妄等の意味がある。馬鹿は当て字だ。なぜ莫迦かといえば、自分がまだ「盛者」だと思い込んでいるからだ。若いころ、とりわけ首相時代の“栄光”が今でも光り輝くと錯覚しているのである。「必衰」と続く運命を理解できないのだ。そしてその錯覚を二乗しているのが、原発でポピュリズムを起動できるという誤判断であった。脱原発は、衆院選では小沢一郎の日本未来の党の大敗北。参院選では原発再稼働を主張した自民党だけが勝ったのに、まだ分かっていないのだ。懲りず、「原発ゼロ」で勝てると思ったが、こたびも「必衰の理」が現実のものとなったのだ。

 慌てて細川は、演説から脱原発色を薄め、他の課題に移そうとしているが、選挙直前での方向転換は悪あがきとしか言いようがない。50年も政治記者を真剣にやっていると、なぜか人に見えない信号を政界から受け取ることができるようになるとみえて、我ながら予測が全て的中するようになるのは恐ろしいほどだ。また今度も当たってしまうのだ。都知事選の勝負は舛添要一で決まりなのだ。1月23日の時点で舛添有利と伝えた流れに変化はなく、毎日、朝日、日経などの調査もこれを裏付け、そして読売の2日付の調査結果も舛添リードだ。読売の調査の特色は、都知事選を左右してきた浮動票の行方を重視している点である。同紙によれば、無党派層は舛添支持が3割強でトップに立っており、細川への支持は1割強にとどまり、宇都宮にも後れをとって3番手にとどまっているのだ。これが意味するところは何かといえば、小泉ドンキホーテが細川サンチョパンサをおだてて、無党派層の風を巻き起こそうとして、風車に馬ごとはね飛ばされた構図である。小泉は民度の低い都民なら「原発ゼロ」でだませると踏んで間違ったのだ。今回の都知事選は無党派の風が起こらない珍しい選挙となるのだ。それではなぜ無党派の風が生じないのだろうか。

 まず第一に都民は猪瀬直樹の「裏切り」にあったと考えているのだ。猪瀬の本質を見誤り投票して、400万票もとらせてしまったことを民度が低いなりに反省しているのだ。 いくらなんでも国政選挙、地方選挙を含めて史上最高の票数を、なんであんな男に与えてしまったのかと悔やんでいるのだ。その悔やみが浮動票の縮小効果をもたらしている。わずか1年後の選挙なのだから、まだ失敗を忘れないのだ。さらに加えて、細川、小泉の“老い”が予想以上に著しかったことも挙げられる。テレビに出る細川をつぶさに観察すれば、その“弱り目”は相当なものがある。かつて細川政権を樹立して政権を担当したときは、少なくとも殿様なりに覇気があった。その覇気がカリスマのようなものを醸し出していた。しかしいまは、ひからびた秋刀魚のように脂っ気が全く失せてしまって、食べてもぱさぱさするだけという感じを視聴者に与えてしまうのだ。一方、郵政選挙の夢が忘れられぬ小泉は、身振り手振りも郵政選挙そのままに、まるで場末の婆さん芸者が晴れの舞台に躍り出たようだ。原発ゼロ一点集中選挙で勝てると判断したのだ。しかしその踊りをみれば、カリスマ政治家が持つ色気は全く感じられない。踊りの達人は、老いても品のよい色気があるものだが、小泉は品がない。そして首相を経験したものとも思えない軽率さが目立つ。殿はもともと莫迦で、乗せられたから仕方がない側面があるが、小泉の原発発言には、ことをねじ曲げる“邪心”が見られる。

 元首相が国家を紛れもなく衰亡に導く「原発ゼロ」を臆面もなく主張するのは、莫迦でなくて何であろうか。原発問題の理解もないまま、“気合い”で勝負に勝てると踏んだのだ。読売の調査は、「都知事選は原発ゼロで国が発展できるというグループと、原発なしでは発展できないというグループの戦い」という小泉の発言を、真っ向から否定してしまった。争点を「医療や福祉政策」とした人が84%で最多。そのあと「地震などの防災対策」、「景気や雇用対策」、「防犯や治安対策」と続き、「原発などエネルギー問題」を選んだ人は61%で5位にとどまったのだ。いまや小泉の「トイレなきマンション」論は、「むしろ化石燃料による発電のほうがトイレなきマンションである」という事実によって、世界中で駆逐されつつある。CO2の際限なき垂れ流しが、既に地球温暖化と気候大変動となって現れている。このまま放置すれば、地球の温度が今世紀中に4度上昇し、人類が住める状態ではなくなる。世界の潮流は、原発新設がブームとなっているのだ。原発エネルギーは、地中から得たものを地中に戻すだけであり、その管理を確立すれば、全く地球を汚すことがない。科学の発展は確実に完全管理へと導く。科学的な根拠に無知なまま、都民をだまそうとしても、無理なのだ。こうして第2次小泉劇場は、細川大敗北となって、どんちょうが下がりつつある。同じ「脱原発」で、宇都宮健児と「脱原発」票が分かれたのも失敗だった。一本化していれば、いい勝負になった可能性はあったが、ここまで来たら無理だ。
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