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2013-11-27 06:48

スパイ天国返上の流れが出来た

杉浦 正章  政治評論家
 戦後まれに見る対決法案成立のめどがついた。特定秘密保護法案は与野党の圧倒的多数で衆院を通過した。これだけの大法案で、自民党の造反者がわずか1人であったことがすべてを物語っている。もう日本は激変する極東情勢の中で、その国家としての存立を左右する情報確保において「ダダ漏れスパイ天国」の汚名を返上できる流れとなった。半世紀前の日米安保条約反対論者が誤判断を恥じてか、今その口をつぐんでいるように、法案の衆院通過は将来の国の行く末を見据えた決断であり、その必要性は歴史が証明してゆくだろう。米、英、仏、独などが厳しい秘密保護で国益を守っているように、我が国もようやく普通の国としての体制を整える流れとなった。秘密保護法案が成立への流れを確保した背景を太筆で書けば、一にかかって極東情勢の激変がある。中国や北朝鮮の軍事的どう喝に重大な懸念を抱いた国民は、国政選挙における選択で革新勢力を激減させ、与党に大きな力を与えた。これがまさにサイレント・マジョリティとして存在しており、すべての原動力である。国際環境の変化に思いが届かない野党や朝日新聞を中心とする一部マスコミは、安保改定時と同様の手段で、国民の反対運動を煽ったが、その時代錯誤性を今さらながらに思い知ったに違いない。サイレント・マジョリティは動かず、デモを見ればひまそうな年寄りばかりで、若者はいない。安保反対が学生運動を中心に盛りあがったような雰囲気は全く見られないのだ。

 一部マスコミのねつ造と虚報による大衆扇動は完敗したのだ。朝日は11月27日付社説で「民意おそれぬ力の採決」と見出しに取ったが、朝日における民意とは何か。議会を通じて、間接的に国民の意思を国家意思の決定と執行に反映させる代議制を取る以上、多数を確保した与党が民意そのものではなかったのか。それとも、中国のように共産党1党独裁が民主主義にふさわしいとでも言うのか。スパイ天国を放置して、国家の命運を左右する情報を奪われ、中国に蹂躙(じゅうりん)され、やがては属国になれば、どうなるか。言論の自由や表現の自由どころではない。それを未然に防げというのが真の民意ではないのか。激変する国際情勢に辛うじて対応しようとする安倍政権が、まともなごく普通の政権なのであり、民意を恐れぬのは朝日の方ではないか。同社説は「まずは国家ありき」と批判するが、中国の防空識別圏設定などで国家存立の危機にさらされているのは、日本にほかならない。情報を守ることは、国家として最小限の責務であり、常識なのだ。

 偏向報道は朝日ばかりではない。国民から視聴料を取る公共放送であるはずのNHKの26日7時のニュースはあまりにもひどすぎた。国民の反響は反対論しか報道しないのだ。これで不偏不党を標榜できるのだろうか。NHKの左傾化は、原発報道の偏向とも相まって抜きがたいところにまで到達した。少なくとも240の過半数を大幅に超えて、340前後の支持による衆院通過を、どこかの民放の如く一方的に報道するとは何事か。国会で徹底的に究明する必要がある。野党とりわけ維新と民主両党は、醜態をさらした。まず維新は、政党としての体をなしていない。なぜなら修正で合意しておきながら、委員会も本会議も欠席して、投票権の行使を放棄した。幹事長・松野頼久は「28日採決だったら賛成した」というが、全く理屈が通らない。参院回付を遅らせて廃案にしよう、という魂胆が見え見えである。党内賛否が伯仲して、やむにやまれず欠席作戦を取らざるを得なかったのであり、維新共同代表の橋下徹も石原慎太郎も超重要法案での統率力の無さを露呈させた。

 一方、民主党も代表・海江田万里の対応能力が問われる結果となった。その基本姿勢は、マスコミにこびを売るという、古き悪き野党の特性をむき出しにしたものであった。もともと秘密保護法は民主党政権時代に作ろうとしたものであり、本来なら修正に応ずるべきものであろう。それを「対案」なるものを提出して、修正の余地を狭め、最初から継続審議か、廃案を狙った。この政党も、議論を深めれば賛否両論で収拾がつかなくなり、分裂傾向を強めることを恐れた結果の対応であった。野党第1党としての主導権発揮とはほど遠いものがあった。政府・与党は、底が見えた“革新”の対応に臆する必要は無い。きょう27日にも成立するNSC法案との連動が不可避な秘密保護法案である。何としてでも会期内成立を図り、これを基盤に集団的自衛権の憲法解釈を実現して、国防の基本を築き上げるべきだ。最後に、この程度の法案で国が全体主義化することはありえないし、首相・安倍晋三にはそのような思惑はないことを断言しておく。
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