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2013-11-26 12:36

(連載)憲法解釈の変更は、慎重に(2)

角田 勝彦  団体役員、元大使
 自衛隊に関する憲法解釈は、これまで、その成長とともに、以下(1)~(5)のように変更を重ねてきた。集団的自衛権については、国連加盟国である日本は集団的自衛権を有するが、その行使は「わが国を防衛するための必要最小限度の範囲を超えるもので、憲法上許されない」(1981年5月29日政府答弁書)と解釈されている。

 (1)1954年の発足当初、警察予備隊や保安隊の後身であることから「警察機能を担う組織であって武力組織に当たらない」「旧陸海軍の組織とは性格を異にする」とされ、自衛官も「文民に当たる」と解釈されてきた。その後、自衛隊がある程度定着したことなどから、政府は1965年に従来の解釈を変更し、自衛隊を国の武力組織と位置付け、自衛官についても「文民に当たらない」とした。
 (2)1959年3月30日の東京地裁(伊達秋雄裁判長)は、砂川事件で、駐留米軍を憲法違反と断じたが、高裁を飛ばして最高裁に直接上告された結果、同年12月16日全員一致でこの判決は覆えされた。
 (3)1973年9月7日札幌地裁は、長沼基地事件で「自衛隊は、規模、装備から見て明らかに軍隊であり、違憲」との判決を下したが、控訴審(札幌高裁)は、1976年8月5日「自衛隊の設置等は統治行為に属する問題で裁判所の判断外。自衛のための戦力保持に関する9条の規定は意味が不明確」との判決で、これを覆した。
 (4)1994年7月20日、村山富市首相(社会党委員長・当時)は、衆議院本会議の代表質問に対する答弁で、自衛隊と憲法の関係について「専守防衛に徹し、自衛のための必要最小限度の実力組織である自衛隊は、憲法の認めるものであると認識する」と述べ、自衛隊は「合憲である」ことを明言した。
 (5)2008年4月17日、名古屋高裁は「自衛隊の活動、特に航空自衛隊がイラクで現在行っている米兵等の輸送活動は、他国の武力行使と一体化したものであり、イラク特措法2条2項、同3項、かつ憲法9条1項に違反する」と判決を言い渡した(5月2日確定)。

 このように憲法解釈はたしかに不動のものではないが、従来の法制局解釈を変えて「憲法上、集団的自衛権は行使を容認されている」という説明を行うためには、必要論のみでは不十分だろう。時間的余裕も生まれた。安保法制懇は、法制局を説得し得る法的論理を構築するよう務めるべきだろう。(おわり)
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