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2013-11-25 11:20

中国に起きている精神と文化の革命

若林 洋介  学習塾経営
 中国が歴史的な大変動期にあることは間違いない。鄧小平の改革解放政策は、本格的な近代化推進政策であり、資本主義化・都市化・工業化を急速に進展させた。その結果、経済的な下部構造の急速な変革が同時に精神的・文化的な上部構造の急速な変革をも生み出しつつある。特に資本主義化の推進の結果、貨幣経済が農村部まで急速に浸透して来ている。そうなると今迄相互扶助的な生活様式で何とか生活できていた人達が、(現金収入が無いため)生活ができなくなり、貧困層が増大する。一方、都市の富裕層においては、教育水準の向上、高等教育の拡大などの結果、教養市民層も生まれて来ている。先日のNHKのテレビ番組では、中国において空前の宗教ブームであり、相当の拡がりをもって拡大しつつあるとのことであった。一説によると、キリスト教人口は1億人に達すると言われ、仏教寺院も富裕層の寄付の増大で建設ラッシュであるという。

 チベット問題等であたかも仏教弾圧をしているように誤解されているが、チベット民族の弾圧政策が、結果的に仏教弾圧となっているというのが真相のようだ。また、共産党政権は、2000年以降、共産党の幹部教育に「儒学」を採用したとのことであるから、官民共に「心の革命」が進行しつつあるということのようだ。かつて徳川幕府が、儒学(朱子学)を官学として、官僚体制秩序の維持を画策したように、共産党政権も儒学を採用して、官僚機構を再構築しようということではなかろうか。

 毛沢東の文化大革命の時代には農民運動から生まれた毛沢東思想があったが、鄧小平以降の改革解放の時代には「先富」論による経済優先の思想がある。資本主義社会は、同時に競争社会であり、格差社会の進行は必然的に伴うものであったが、アメリカなどでは、キリスト教会が弱肉強食の競争社会を補完していた。中国における宗教ブームは、そのような社会的役割を果たすことになる可能性がある。キリスト教は「自立した個人」を確立することと、「社会的弱者を救済する」こととの両面を持ち合わせており、今後とも大きく伸びていくに違いない。
         
  このように考えてみると、儒学を学び、仏教を学び、キリスト教を学ぶ中国人が増大していることは歓迎すべきことであり、我が国の国民ともようやく「心の交流」ができるベースができつつあるということになる。我が国の明治維新以降の精神文化(儒学・仏教・キリスト教・西洋思想)の蓄積は、非常に役立つことになるだろう。実際に中国で、福沢諭吉の『文明論の概略』、渋沢栄一の『論語と算盤』が読まれ、松下幸之助の経営思想が学ばれていることは、そのことを証明している。最近の際立った傾向は、特に2010年以降の中国の空前の出版ブームは、爆発的なものであり、歴史の大転換の予兆を示すものである。現在の中国が市民革命前夜にあることは間違いない。同時に中国国民との本当の「心の交流」の時代が始まりつつあることも間違いないのだ。                                                   
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