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2013-09-18 10:34

(連載)国際的多数派の形成に努力を(2)

鍋嶋 敬三  評論家
 柳条湖事件は関東軍が満州占領を企て南満州鉄道を爆破した事件(1931年)で、その後関東軍は中央政府の「不拡大方針」を無視して戦線を拡大した。満州国の建国、国際連盟からの脱退(1933年)と日本はその後わずか1年半の間に太平洋戦争へとつながる国際的孤立の道を走った。日本は第2次大戦での310万人という犠牲者の上に、国際的孤立を避け対外的協調を旨とする外交の原則を学んだ。日本近代史の150年間をつうじて、米国、中国、ロシアという大国との関係が日本の運命を左右してきた。それは21世紀に入っても変わらない。米露にとっても中国政策が対外政策の鍵になっているからだ。

 日本はその領土主権の主張に理があることを国際社会に訴え、多数派を形成する外交努力に全力を挙げなければならない。安倍首相の「地球儀外交」は9月も活発だ。トルコメニスタンの大統領を東京に迎え、「中央アジア+日本」の枠組みを強化した。同国は習主席が9月上旬、大型の経済協力計画をもって乗り込んだ中央アジア4カ国の一つである。

 モンゴルとの首脳会談では「戦略的パートナーシップ」の強化、安全保障・防衛協力の発展で合意した。ベトナムとはインフラ整備に540億円の円借款を供与。日本は同国への最大の援助国である。中国からのサイバー攻撃を念頭に日本政府は東南アジア諸国連合(ASEAN)10カ国と閣僚会議を開き、攻撃の予知や防御面で協力関係を築いた。

 オーストラリアは9月7日の総選挙で中国寄りの労働党政権から日本重視の保守連合へと政権交代。ニューヨーク・タイムズ紙は豪州が同盟国の米国と、最も重要な貿易相手国である中国との間でライバル関係が強まる中で、米中間の「板挟み」となり、「経済か、安全保障かの難しい選択を迫られる」(ロウィ国際政策研究所のフリラブ理事長)との論評を掲載した。多数派を形成する上での鍵がここにある。日本としては開発協力や技術革新、貿易、投資の拡大など得意の分野でその国の発展に寄与する実質的な協力を進め、信頼できる仲間を増やす地道な努力が不可欠である。(おわり)
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