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2006-12-18 15:35

言論の自由を阻むな

田久保忠衛  杏林大学客員教授
 北朝鮮のミサイル連射や核実験実施に関連して日本の一部で生まれたささやかな核論議問題は不思議だ。いまだに核の論議をタブーとする雰囲気が日本全体にただよっている。去る12月17日の日曜テレビ番組で民主党の渡部恒三最高顧問が例の大声で「隣の変な国が持っているからおれも持とうなんてことになったら、人類が滅びてしまう」とがなり立てていた。与党の自民、公明両党の主な議員が核論議をタブー視しているのもおかしいが、野党も渡部氏に代表される意見が多数を占めているのだろう。さらに奇怪なのは、マスメディアの中に核論議を取り上げるどころか、禁忌とする風潮が続いている事実である。核問題を取り上げたのは、産経新聞だけだったのではないか。

 改めてここで言っておきたいが、民主主義体制には言論、集会、結社の自由が保障されている。はっきり主張すれば、民主主義体制そのものを暴力で倒そうという思想まで認められているのだ。現にいまある政党で暴力革命を実行したところもある。実行についてまで民主主義体制が寛容であると、体制そのものが崩壊してしまうので、暴力革命の「実行」は毅然として阻止しなければならないのは当然だが、思想は自由である。

 これを最も主張しなければならないのは、言論の府である国会の議員なのにもかかわらず、核武装論者をあたかも「悪魔」のように見て、言論のリンチを加える現状は、まともな社会からはほど遠い。中川昭一自民党政調会長や麻生太郎外相は非核三原則を守り、いまの日本が核武装をするのには反対だとしたうえで、「議論」は自由だと当たり前の発言をしただけで、どうして危険視されなければいけないのだろうか。

 国連安保理の5常任理事国は次々と核を保有したうえでNPT(不拡散条約)を勝手につくり上げた。イスラエルが核保有国であることは、実験こそしないが、公知の事実とされ、インドとパキスタンは公然と核を手に入れた。韓国、台湾、南アフリカは生産を手がけ、とくに南アは実験に成功したが、あとでこの4か国は核保有を断念した。国家の意思と異なる事情で保有を諦めざるを得なくなったのだ。

 空理空論だと冷笑する向きが日本の大勢だろうが、「核」と「国際政治」を考えると、非核国家なる存在がいかに無力かは、すぐ理解できるはずだ。広島、長崎の悲劇を回避するのは反核のお祈りや反核の信念を持てば大丈夫なのか。日本国民はもちろん、国民を啓蒙しなければならない立場にある政治家と言論人の大方は、戦後の「平和主義」の夢から覚醒していない。それどころか反核を口実に言論の自由を制限しつつある愚に気づいてもいない。
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