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2013-09-11 10:38

(連載)シリア情勢についての雑考(1)

河野 勝  早稲田大学政治経済学部教授
 アメリカのオバマ大統領が、シリアに軍事介入すべきかどうかで逡巡している。ここに至って、連邦議会から事前承認を得ることを決定したからである。アサド政権の化学兵器使用を機に、すぐさま介入すべきだと主張していた(つまり議会には事後承認を求めればよいと考えていた)ケリー国務長官らは、はしごを外された格好である。

 オバマ氏が議会の承認を求めることについては、いくつかの理由が挙げられている。最も直接的には、イギリスのキャメロン首相がアメリカと連携した軍事介入についての議会の承認を求めたが失敗したことがある。この経緯から、オバマ氏が孤立感を深め、すくなくとも米国としてはまとまって行動したいと考えるようになったのだそうである。また、オバマ氏には、かつて大量殺戮化学兵器の存在を理由にイラクに介入して失敗したブッシュ前大統領の轍を踏みたくないという思いが強いらしい。さらに、オバマ氏がG20サミットに出発するので、その間、議会にこの問題を熟考させるという形で、時間稼ぎをした、ということもいわれている。

 ボクは、シリア情勢とアメリカの対応を、ここまで見守ってきたが、自分の考えを整理するためにも、いくつかの点をここに書き留めておきたいと思う。

 第一に、周知のように、アメリカでは、ベトナム戦争以後、国家が戦争をする決定権を誰がもっているかについて、憲法上および政治的な議論がずっと行われてきた。それは、アメリカの建国当時から続いている、行政府と立法府との間の「均衡と抑制」をどのようにして維持するのが正しいのかという国家の統治構造に関する論争のひとつの表れである。最近、日本では集団的自衛権についての議論が盛んであるが、その議論を進める上でも、こうした統治構造の側面からどのような考慮が必要であるかを考えていくことは重要だと思う。(つづく)
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