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2013-08-31 10:42

(連載)「パノフ・東郷共同提案の問題点」に反論する(2)

東郷 和彦  京都産業大学世界問題研究所長
 国後・択捉両島について「双方が受け入れられる法的な地位を持つ特別共同経済特区とする」との提案について、茂田氏は完全に誤解している。プリマコフ提案を始めとするこれまでの共同経済活動ないし特別地域は、すべて「双方の法的立場を害さない」ことが前提となっていた。日ロ間でまとまったものも、1991年のいわゆるビザなし訪問協定も、98年の「四島周辺漁業協定」も、すべてそうだった。

 ここで言っている特別区は、それらとはまったくちがう。これは、ロシアが主張する「ロシアの法体系の中に日本の立法行為を明示的にいれる」という案である。これまでのすべての協定が「環境整備の輪」から出ていたとすれば、この特別協定は「主権の輪」そのものから出ている。

 今まで一度も実現したことはないが、日ロのこれまでの交渉で、こういう案が1回だけロシア側から提案されたことがある。98年11月の小渕訪ロの際ロシア側から提案された3枚紙の提案である。この案の事実上の作者は、パノフである。今回の共同提案は、四島に対し適用しようと提案された98年の共同立法提案を、国後・択捉両島について適用しようというものである。

 もちろん、ここで述べたことに加えて、考えなければいけない重要な問題は、たくさんある。「日本の立法の範囲」は、極めて難しい交渉になる。最終目標である「四島返還」とここでいう国後・択捉両島についての共同立法区域設定案をどう関連させて考えるかという問題もある。98年提案では、ロシア側は、四島共同立法区域の設定を第一条約で約束し、その実施を経た後の第二条約で国境線画定をやろうと提案してきた。私たちは、この共同提案ではそれらの点については何もふれていない。そういう問題こそ、実際の交渉者に考えていただきたいと思ったからである(つづく)。
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