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2013-08-30 11:56

(連載)「パノフ・東郷共同提案の問題点」に反論する(1)

東郷 和彦  京都産業大学世界問題研究所長
 茂田宏氏から3回にわたる連載で「パノフ・東郷共同提案の問題点」と題するご批判をいただいたので、ここにその反論を述べさせていただきたい(連載4回となる予定)。冒頭にまず指摘しておきたいことは、茂田氏の問題提起の一部は、この共同提案に対する誤解ないしは理解の欠如によるものだということである。

 1956年共同宣言に基づく歯舞・色丹の返還について「話し合うことは多くない」という私の意見について、もしも茂田氏が、共同宣言上の権利義務は「平和条約の締結後の引き渡し」のみであり、この引き渡しは主権・施政権を含めての二島そのものの引き渡しであるということについて、私が異見を持っているとお考えなら、それはまったくの杞憂である。この点について、茂田氏と私の意見はまったく同じであると思う。

 しかし、引き渡しを行うにあたって、話しあわなければいけないことは、極めて多義にわたる。この話し合いを、なんと呼ぶか(条件か、手続きか等)ではなく、いかなる問題を実際に話しあわなくてはいけないかを、考えなくてはいけない。例えば、引き渡し後の在留ロシア人の法的地位、二島を離れるロシア人の扱い、引き渡し後のロシア側の漁業権その他の権利のありかた、引き渡し後の日米安保条約の適用問題、引き渡しの時期、その他1945年以後の68年間のロシア人居住によって発生する様々な問題がある。それらは、一つ一つ決してやさしい問題ではない。真剣に話し合って合意に達せねばならない。外交の実務に携わった茂田氏に、これらの点について異論があるとは思えない。

 更に、万一茂田氏のいう「到底同意できないロシア側解釈」が提起されうるとしても、それらは「引き渡しの話し合い」の中で堂々粛々と反論すべきことである。話し合いの前に前提条件をつけることではない。外交の常識として、この点も茂田氏に異見はないと信ずる。(つづく)


 
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