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2013-08-24 13:39

ケリーとラブロフの米露協調路線は不動

川上 高司  拓殖大学教授
 8月7日、オバマ大統領は9月に開催予定だったロシアのプーチン大統領との会談を行わないと発表した。これは、アメリカ政府の元コントラクター(契約職員)でロシアに亡命を希望していたエドワード・スノーデンの要望をロシア政府が受け入れ、一時的亡命者としてスノーデンをロシアに受け入れたことに反発したからである。ロシア側はその発表を冷静に受け止め、プーチン大統領は「残念だ」とコメントしたにとどまった。しかし一方でまだ「窓口は開いている」と、首脳会談の可能性を残している。ロシアとアメリカのトップがスノーデンを巡ってお互いに譲り合わないで話合いを拒む様子は「第2の冷戦の始まりか」との疑念を世界に広げているが、実際には米露は相変わらず緊密である。

 米国のケリー国務長官とヘーゲル国防長官は、8月9日にロシアのラブロフ外相やセルジュコフ国防相とワシントンで「2+2」の会合を開いた。「2+2」の開催そのものが、米露が同盟関係に入ったかのごとき印象を感じさせる。5時間にわたる会合はスノーデン問題からシリア問題やMDなどまで幅広く及んだ。中でもケリーとラブロフの共通の議題はシリア問題だった。シリア国際会議は開催の目処が立たず頓挫したままである。シリアの状況は悪化する一方で、難民や犠牲者の数は増える一方である。さらに、アサド大統領を狙った暗殺テロも起こるなど、予断を許さない。早急な対応が必要となっている。

 会談後の記者会見ではケリー国務長官はラブロフ外相を「セルゲイ」と呼び、親密な関係であることをアピールした。ラブロフ外相もそれに応えるかのように「スノーデン問題は米露の関係になんら影響しない」と関係悪化をきっぱりと否定し、米露両国は意見の違いを超えて、シリア問題に取り組んでいることを強調した。シリア国際会議の開催に向けて今月末に再び会談をするという。

 ケリー国務長官のカウンターパートを務めるロシア側の外相のセルゲイ・ラブロフは、ソ連時代から大使や国連での経験を積み、いわばロシア外交を担ってきた重鎮である。1950年モスクワに生まれたラブロフは英語、フランス語、シンハリ語を話す。ラブロフはグルジア出身のアメリカ人を父にもち、グルシア人の母を持つ。母親は政府高官を務めたエリートだった。彼がケリー国務長官と頻繁に会談を重ね信頼関係を構築できるのは、実は彼が持つアメリカ人という血筋にあるのかもしれない。ラブロフが外相でいる限り、プーチン大統領のアメリカとの協調路線は続くということだろう。
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