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2013-08-19 14:15

(連載)「被爆国日本」の対イラン外交(1)

水口 章  敬愛大学国際学部教授
 広島、長崎に原子爆弾が投下されてから68年が過ぎた。長崎市長の田上富久氏は8月9日の平和宣言で、日本政府に被爆国としての原点に立ち返ることを求めた。その中で、同市長は、今年4月にジュネーブで開催された核不拡散条約(NPT)再検討会議準備委員会で80カ国が賛同した核兵器の非人道性を訴える共同声明に日本が署名しなかったことに触れた。また、NPTに加盟せずに核兵器を保有しているインドへの日本の原子力協力はNPTを形骸化させるとも指摘した。

 4月の共同声明に署名しないという、日本政府が取った政策選択の要因には次のようなことがあると考えられる。第1に、日本は米国と安全保障条約を締結し、その核の傘の下で安全・安心を維持している。第2に、対中国戦略からインドとの関係強化が重要になっている。

 こうした説明は、国益の観点からすれば一定の理解は得られるだろう。しかし、核兵器廃絶は地球規模の「平和」という国際公共財を追求する国際行動である。果たしてそれよりも国益を優先させた政策選択は、唯一の被爆国である日本にとってふさわしいものだったのだろうか。

 仮に、国益優先は現実主義的意思決定だとすると、共同声明に署名しないことを補う核拡散防止に向けての外交政策が必要となる。安倍首相は、長崎原爆の日の式典のあいさつで、昨年、日本が国連総会に核軍縮決議を提出し採択されたこと、来年広島で「軍縮・不拡散イニシアティブ」の外相会合を開催することなどに言及した。これらの政策に加え、より具体的な行動、例えば中東地域における核開発問題に取り組む政策も重要ではないだろうか。(つづく)
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