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2006-12-14 17:09

麻生外相の「自由と繁栄の弧」に裏づけはあるのか

増山大介  高校教諭
 麻生太郎外相が、11月30日に「『自由と繁栄の弧』をつくる――拡がる日本外交の地平」と題する講演を行った。日本も普遍的価値を重んずる民主主義国として、EUやNATOとも連携しながら、インドシナから中央アジアを経て、東ヨーロッパにいたる巨大な「自由と繁栄の弧」の形成に関与していくとの趣旨の講演であった。

 しかしながら、ここで疑問があるのは、日本は本当に「自由と繁栄の弧」の形成に関わる意思を有しているのかという点である。平和の維持のためには、ただ単にお金を出せばよいというものではなく、それ相応の人的貢献が求められる。湾岸戦争時、日本は1兆円を超える戦費を負担したにも関わらず、人的貢献がなかった為に、クウェートから感謝されることもなく、最大のパートナーである米国からも評価されなかった。当時と比して、現在の日本は、より積極的に平和維持活動(PKO)に貢献しようとしていると言えるであろうか。疑問である。諸外国から見れば、とても日本に「自由と繁栄の弧」の形成に関わろうとする強い意思があるとは見えないであろう。

 問題は、平和維持活動への関与だけではない。「自由と繁栄の弧」の土台には、麻生外相自身が認めるように、人権や民主主義といった普遍的価値へのコミットメントがなければならない。しかし、日本は米国や欧州諸国と比べて、これまでどれほど真剣にこの問題と取り組み、そしてコミットしてきたと言えるだろうか。これまた、疑問である。中国における人権問題やチベット問題について、またロシアにおける民主主義の蹂躙やチェチェン問題について、日本は遺憾の意や抗議の意を表明したことがあったであろうか。日本外交は、中国やロシアの顔色を見て、当たり障りなくその場をしのぐだけの外交に終始してきたのではないか。日本外交のキャッチフレーズは、いつも実行の伴わない空虚な美辞麗句だった。麻生外相が真に「自由と繁栄の弧」を築こうとするのであれば、まずはこのような日本外交の「事なかれ主義」を脱する必要があろう。
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