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2013-08-05 11:13

(連載)安倍首相が先導したPUBLIC DIPLOMACY(1)

鍋嶋 敬三  評論家
 安倍晋三首相による東南アジア3カ国(マレーシア、シンガポール、フィリピン)歴訪(7月25日ー27日)は、東南アジア諸国連合(ASEAN)との関係を重視する戦略外交の推進として評価される。1月のベトナム、タイ、インドネシア、5月のミャンマー訪問を合わせてASEAN10カ国のうち主要7カ国との首脳会談をこなした首相は、「二人三脚」と位置付けた日・ASEAN関係を強化した。

 7月歴訪で注目すべきは首相が目指す憲法改正、集団的自衛権の行使という政治課題について歴代首相で初めて各国首脳に理解を求め、内外記者会見でも所信を披瀝したことである。参院選挙で自民党大勝、「ねじれ国会」の解消を背景に基本課題に着手する環境が生まれたとの判断がある。太平洋戦争で日本軍の占領を経験したアジア諸国には極めて敏感なテーマだけに、首相が進めようとしている道筋を自ら国際社会に明示するPUBLIC DIPLOMACYを展開したことは特筆されるべきである。

 PUBLIC DIPLOMACY は、英国外務省の定義によれば、自国の「国際社会における戦略的優先事項を実現するプロセス」(2012年9月13日、拙稿「百花斉放」No.2427)である。戦後の日本外交は「顔のない外交」「小切手外交」とやゆされてきた。日本の進路と国際社会における役割について指導者が明確な指針を示すことがなかった。

 1974年、田中角栄首相は東南アジア歴訪で反日暴動に見舞われた。その反省もあって3年後に歴訪した福田赳夫首相は、(1)日本は軍事大国にならない、(2)心と心のふれあう相互信頼関係を築く、(3)日本とASEANは対等な協力者である、という3本柱から成るアジア政策の基本方針を「福田ドクトリン」として発表し、諸国からも高い評価を受けた。(つづく)
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