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2013-07-17 08:40

(連載)対中・対韓首脳外交は参院選待ち(2)

角田 勝彦  団体役員
 経済面では久しぶりに日本が注目されている。 国際通貨基金(IMF)は7月9日発表した世界経済見通しで「消費や純輸出に引っ張られ、予想より成長が強い」と評価し、日本の2013年の成長率を前回の4月時点より0.5ポイント上方修正して、2.0%とした。主要国では数少ない上方修正である。これに対し中国の13年の成長率は0.3ポイント引き下げて、7.8%、14年も0.6ポイント下げて、7.7%と予測した。ブラジル、ロシアも大幅に下方修正した。輸出・投資頼みに限界を見て、中国経済の減速感が強まっている。第1四半期(1~3月)が7.7%となり、第2四半期(4~6月)も7.5%となった。日本からの観光客数落ち込みに、韓国の観光業界が悲鳴を上げている事実もある。

 韓国及び中国との外交の最近の動きを見てみよう。韓国では2月就任した朴槿恵(パククネ)大統領が、米国に次いで日本を訪れてきた歴代大統領の慣習を破り、5月の訪米に次いで6月に中国を訪問した。これまで5月に行われてきた日中韓首脳会談も実現せず、安倍晋三首相との顔合わせが実現していない。朴大統領は、7月10日、韓国メディア論説委員らとの昼食会で日韓首脳会談に関連し、竹島(韓国名・独島)や旧日本軍慰安婦問題について「日本は韓国民の傷を刺激し続けている。未来志向で進む雰囲気の中で行われなければならない」と、日本側の態度に変化がなければ会談は難しいとの考えを示した。

 新聞報道によれば、安倍政権は、7月12日、開催を呼びかけても実現可能性は低いと判断し9月上旬にロシアで開かれる20カ国・地域(G20)首脳会合に合わせた日韓首脳会談の開催を見送る方針を固めた。9月下旬にニューヨークで見込まれる安倍晋三首相の国連総会出席の際も、韓国に首脳会談を要請しない由である。ただし、7月、ブルネイで尹炳世(ユンビョンセ)外交通商相と岸田外相が初めて会談した際「様々なチャンネルで意思疎通、情報交換を続ける」ことを確認しており、7月11、12日には斎木外務次官の訪韓があった。韓国外交通商省の金奎顕(キムギュヒョン)第1次官が17日来日する予定で、参院選後の首脳会談の可能性は残っている。

 新聞報道によれば、中国は、6月中旬、日中首脳会談開催の条件として、日本政府が尖閣について領土問題の存在を認めることと日中双方が問題を「棚上げ」することを求めてきた。すなわち「解決すべき領有権の問題は存在しない」とする日本政府の見解を変更するよう求めてきたのである。安倍晋三首相は、6月28日のインターネットでの党首討論会で「中国側が尖閣諸島問題で一定の条件を日本が呑まないと首脳会談をしないと言ってきている。間違っていると言い続けている」「課題があるなら会って話すべきだ。それが外交の常識だ」と説明した。新聞報道によれば、6月末谷内正太郎内閣官房参与が訪中した際、戴秉国(ダイビングオ)前国務委員との会談で「日本政府として、認められない」と回答したが、「領土問題の存在は認めないが、外交問題として扱い、中国が領有権を主張することは妨げない」との打開案を提示した由である。中国の反応は参院選待ちであろう。 中・韓両国は参院選後新たなアプローチを行ってくるかも知れない。わが国としても首脳会談のための軽躁な妥協は避け、相手のアプローチに柔軟・迅速に対応できるよう、さまざまな検討を重ねておくべきだろう。(おわり)
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