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2006-12-06 15:49

隔世の感がある日中関係

坂本正弘  日本戦略研究フォーラム副理事長
 2006年11月中旬北京で、中国国際友好連絡会主催の「北朝鮮の核開発問題と北東アジア安全保障」に関する日中のシンポジュウムが行われ、筆者も発表を行った。中国側は国防大学、北京大学、精華大学などから参加し、議長はPan国防大学教授が努めたが、会議についての議長総括は「討論の結果、朝鮮半島の非核化について、日中間に共通の利益があることが明らかになった」であった。昨年も、同じ主催者、同じ議長だったが、会議では、日中双方が、靖国、歴史問題、台湾問題で、非難の応酬だったのに比べると、隔世の感があった。

 もっとも、朝鮮半島の非核化が共通の利益だとしても、その理由は異なる。日本が北朝鮮の核が飛んでくる可能性のある国として強い脅威を感じていることは中国側も認識したが、小生の疑問は、これまで北朝鮮を庇い、核開発の進行を黙認していた中国が、何故国連決議に賛成するまでに態度を変更したかである。中国側の言い分は、まず、北朝鮮の核開発に賛成したことはない、また、北の核開発はアメリカに追い込まれた為というのである。しかし、また、北は中国の6者協議での努力を無にし、メンツを潰したとする。更に、北の核開発が日本の核武装など、北東アジアでの軍事競争を誘発するとした。北の核は中国にとって脅威でないとするが、筆者は平壌からの距離が北京は東京よりも近いことも原因であると考える。更に言えば、今年の夏に、上海市長を辞任させるなど、胡錦濤政権が親北朝鮮派の多い対立派に勝利したことも、原因となっているようである。

 北朝鮮の今後のシナリオとして、核大国として君臨するのは許されないが、何らかの事件が引き金となって北と米韓連合軍が衝突する場合、北政権が崩壊して韓国による統一が実現する場合、中国が対北制裁を強化して介入する場合などが考えられる。朝鮮半島から核を排除するという観点から言えば、中国の対北介入が最も効果的だと考えられるのは奇妙だが、その場合、米国や日本の協力は何かと言うのが中国側の問いかけである。ライス米国務長官は以前から、米中間には北朝鮮に関して共通の利益があると述べているが、米中間でも、北への対応について対話が行われていよう。その限りでは、当面米国では中国「責任国家」論が強くなる可能性はある。しかし、中長期の、本質的な米中関係は別である。

 日中関係も安倍訪中以来大きな改善があるが、基本的には、日本経済の回復が本物で、日本の立場が強まる中で、中国側には環境問題や省エネで日本の協力を必要としている状況がある。今後、朝鮮半島問題で協力できるとすれば、了とすべきである。しかし、アジアの覇権を目指す、共産党独裁国との関係は、常に対立を含むと考えるべきである。従って、中国に対しては、対立、争論を恐れないとともに、破綻を避ける方式が良く、結果として友好に到れば多とすべきである。
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