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2013-07-03 08:42

(連載)選挙で安定達成のあとは、規制緩和へ力を注げ(2)

角田 勝彦  団体役員
 もちろんアベノミクスには海外からを含め批判もある。とくに財政健全化への配慮不足への懸念は強い。北アイルランド・ロックアーンG8サミットでも、首脳宣言で、日本の大胆な金融緩和、財政刺激策、成長戦略という「3本の矢」に言及し、「日本の成長を支える」としながら、「信頼できる中期的な財政計画」が求められた。安倍首相が果断さを引用する戦前の高橋是清蔵相の場合でも、インフレの兆しが出てきたところで歳出削減にカジを切ろうとしたものの失敗し、結果として軍事費の膨張とインフレに歯止めがかからなくなった。

 財政が金融緩和をあてにした借金に走り出すと、思うように止められなくなろう。ただし、アベノミクスには税収増の兆しが見えている。6月財務省まとめでは、2012年度の最終的な一般会計税収は今年1月の補正予算時の見込みを約1兆3千億円上回る43兆9千億円程度となり、08年度の44兆3千億円以来、4年ぶりの高水準となる。企業業績の改善で法人税収が伸びたほか、株式の配当増で所得税収も増えた。

 要するに成長が要である。そのためには規制緩和が要である。安倍政権は、4月と5月に成長戦略の第1弾(再生医療実用化、子育て支援など)と第2弾(設備投資増加、農業改革など)を発表していたが、6月「国家戦略特区」の創設や対日投資の加速策などを盛り込んだ成長戦略の第3弾(民間活力など)を発表した。成長戦略を実現することで「10年後には1人あたりの国民総所得(GNI)を現在の水準から150万円増やすことができる」とするものである。

 農業について、安倍首相は成長戦略の一環として「攻めの農業」を掲げ、農地集約化などを柱にした競争力強化を打ち出した。大きな問題は、規制緩和の具体化が見えないことである。近くTPP交渉が本格化する。TPPは「10年間で関税撤廃」が原則だが、自民党はコメ、麦、牛肉・豚肉、乳製品、甘味資源作物の5項目を「聖域」として例外扱いするよう求めている。約6兆円の巨費をつぎ込んだのに成果を上げられなかった1990年代のウルグアイ・ラウンドのときと同様、予算のバラマキとなる危険がある。安倍政権は、150万人の農業就業人口保護と農業自由化を目指して、たじろがず規制緩和に努めるべきである。(おわり)
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