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2013-05-23 06:15

集団自衛と敵基地攻撃は改憲を待たずに、即実行せよ

杉浦 正章  政治評論家
 中国による「尖閣挑発」と北朝鮮の「核・ミサイル威嚇」は、事態即応型の安保戦略への変更を迫っている。とりわけ集団的自衛権の行使と敵基地攻撃能力の保持は、喫緊の課題としての処理が必要となった。与野党とも参院選挙に堂々と賛否の公約を掲げて臨むべきだ。選挙の結果は、確実に「ゴー」となる。それを受けて首相・安倍晋三は躊躇(ちゅうちょ)することなく、両戦略実行の決断を下すべきだ。集団的自衛権の行使に関しては、最近野党に注目すべき動きが生じた。民主党幹事長・細野豪志が「一緒に行動している米軍が攻撃を受けた場合、日本として当然やるべきことはやる」と語り、米国を標的にした弾道ミサイルの迎撃などのケースに限り、行使を容認すべきだとの考えを表明したのだ。これをうけて民主党は5月22日、新設した安全保障調査会の役員会で行使容認に向けての見解をまとめる作業に入った。党内には旧社会党系議員を中心に反対論も根強く、意見集約は容易ではないが、与野党の大勢が一致した動きへの布石となる。集団的自衛権行使も、敵基地攻撃能力も、安倍が端的にその必要を表明している。「近くにいる米軍を助けなければ、日米同盟は大きな危機に陥る」が、集団的自衛権への見解。「日本へのミサイル攻撃が迫っている際に、米軍に攻撃してくださいと日本が頼む状況で、いいのか」が敵基地攻撃能力保持の理由だ。

 集団的自衛権については、内閣法制局が「保有するが、行使できない」などという荒唐無稽な憲法解釈をしているが、実効あらしめるためには第9条改正で明示する方法と、首相が憲法解釈を変更する方法がある。一方で敵基地攻撃能力についてはかつて、鳩山一郎が「座して死を待つわけにはいかない」として可能であると答弁している。敵がミサイルを発射してからの攻撃か、発射する前の先制攻撃かは、議論の分かれるところだ。集団的自衛権行使が実現すれば、日米の防衛体制がどう変わるかだが、米海軍トップの解釈が22日示された。グリナート作戦部長は「もし実現すれば、アメリカ海軍と海上自衛隊が米英のように合同で空母機動部隊を構成し、同盟国としてお互いを防衛することができる」と述べ、日米共同の部隊運用への期待感を示した。これは、大西洋では米英同盟、太平洋とりわけ極東では日米同盟が実効的に作動して、米国の世界戦略が確立することを物語るものである。米国にとっても大きなプラスとなるのだ。

 集団的自衛権について、野党は、検討に入った民主党に加えて、みんなの党、維新が賛成の方向である。憲法解釈で実施する場合には、政権の交代で解釈が揺れる可能性があり、そのための歯止めとして、安全保障基本法の制定などを自民党は考えている。敵基地について自民党は秋にまとまる政府の防衛計画の大綱への提言案として「敵基地攻撃のための打撃力保持」を求めている。こうして日本の防衛の根幹が大きく変わろうとしているが、世論の動向はどうか。全国紙では読売が推進論だが、朝日は集団的自衛権行使も敵基地攻撃能力も両手を広げて「待った」をかけている。同紙は、社説で集団的自衛権の行使について「日米の防衛体制は深く結びついている。これ以上何を求めようとしているのか」と日米同盟の緊密化に反対している。しかし本当に深く結びついているだろうか。日米安保条約は片務条約であり、世界の安全保障の常識とは全くかけ離れているのだ。

 さらに社説は「憲法が求める必要最小限の防衛の原則を一挙に取り払うことになる。国益を損なうだけではないか」と主張している。これも米艦船や米国へのミサイルを、自衛隊が打ち落とせる位置にいながら黙視した場合、それこそ「一挙に」安保体制は崩壊し、国益を直撃する事に考えが及ばない論調だ。朝日の社説は、敵基地攻撃能力については「無用に緊張を高めるな」と主張するが、緊張を高めているのは北朝鮮であり、中国だ。朝日はどこの国の新聞なのだろうか。「自衛隊が敵基地攻撃能力を持てば、周辺諸国が先制攻撃の疑念を抱く」とも述べているが、「疑念」は抱いて貰って結構。これが何よりの周辺諸国への抑止力となるのだ。だいいち北朝鮮の周辺諸国である日本は、ミサイル攻撃の「疑念」を毎日抱かされているのだ。総じて朝日の論調は、「日本は攻撃されて死ね」と憲法に書いてあるような書き方であり、論旨が成り立っていない。とっくにこの世から駆逐された社会党の「非武装中立」「国の安全は天から降ってくる」という思想の残滓を、坊ちゃん論説委員らがありがたく押し頂いて、机上で空論を書いている姿が目に浮かぶ。安倍はこうした論調に惑わされることなく、改憲に先立って秋の防衛大綱で方針を打ち出し、必要な法改正を早期に実施すべきだ。
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