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2013-04-12 09:51

(連載)キャロライン・ケネディ氏ではなく、軍人大使を(2)

河村 洋  外交評論家
 日本が元伊藤忠商事会長の丹羽宇一郎氏を駐中国大使に起用して失敗した経験もあるので、私は上記の批判のほとんどに同意する。しかし日本語や日本文化への造詣の深さについては、プレストビッツ氏が言うほど重要とは思えない。それは現在の日本人はエドウィン・ライシャワー大使の時代よりも英語が堪能になっており、アメリカ文化にもはるかに親しんでいるからである。むしろ安全保障の知識と外交および行政の事務能力、特に危機管理能力の方が重要になってくる。こうした観点から、東京に駐在する次の米国大使は軍人出身者から選ばれるべきだと考えている。軍人出身者なら、ハワイからインド洋に至る地域でアメリカへの畏怖と敬意を醸し出せるような人物の候補は数多い。

 軍関係者なら、マイケル・マレン海軍大将、デービッド・ペトレイアス陸軍大将、レイモンド・オディアーノ陸軍大将など、人材の宝の山である。日本情勢に関する知識が重要と言うなら、リチャード・アーミテージ氏が多くの候補者の中でトップに躍り出るだろう。一般の間では知名度が低くても、太平洋からインド洋にかけての出現するいかなる安全保障上の挑戦相手にも、東京から睨みを効かすだけの資格が充分にある将軍や提督が数多くいる。無名人でも偉業を成し遂げれば瞬く間に有名人になってしまう。有名人を特別に好んで選考する理由など何もない。

 予算削減と強制支出停止によってアメリカの国防力が削減される現在、そうした損失を埋め合わせられるのは政治家や外交官の知識、技能、パーソナリティーである。そうした格好の例を挙げてみたい。現在のロシアは実力以上の大国と見られているが、それはKGB出身のウラジーミル・プーチン氏の「強い男」のイメージに負うところがある。来る駐日大使にはアメリカの威信と強さを誇示する「ジョン・ウェイン」的な人物を任命し、国内外の難題を克服してゆかねばならない。こうした理由から、駐日大使にはキャロライン・ケネディ氏よりも軍人出身者が望ましいと主張する。

 誰が東京に赴任しようとも、余程の事情がなければ日本側がペルソナ・ノン・グラータを指定する立場ではない。しかし日米双方で、ケネディ氏が大使の任務にたえる資質があるのかを再考する必要はある。ケネディ氏が女性であることが日米友好の深化に大きな利点だと論評する論客もいるが、男女平等は現在の日米関で優先度の高い課題とは言えない。また、世襲権力のプリンセスがアメリカ文化の最善のものを体現するとも思えない。世界的に見ても、アメリカの文化のイメージで最善の要素を体現する人物とは、ジョン・ウェインの作品に描き出されたような「男の中の男」であることはわかりきっている。いわば東京に赴任するアメリカの大使とは、大きな棍棒を持って、穏やかに話せる人物こそ望ましい。ここで忘れてはならないことは、韓国はパク・クネ大統領の外交政策顧問であるイ・ビョンギ氏を東京に赴任させることだ。アメリカの大使が世界各国から集まる俊英外交官に敵わないような事態に陥って、一体誰が得をするのだろうか?日米両国の重大な国益のためにも、駐日大使の選定は再考されるべきなのである。(おわり)
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