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2013-04-04 09:57

(連載)参院選と憲法改正(2)

角田 勝彦  団体役員
 自民党も4月2日、参院選公約策定へ本格的な議論を始めたが、1日の記者会見で石破茂幹事長が「国家として『憲法が悪かった』というべきだと思っていない」と述べたように、複雑な対応を見せている。なお参院選公約には昨年の衆院選公約をベースに、株価上昇など経済政策の「成果」を盛り込み、今月下旬に骨子をまとめ、党内手続きを経て5月末に決定する予定である。地域経済活性化策や、環太平洋連携協定(TPP)交渉参加を踏まえた新たな農林水産施策などが焦点となると見られる。

 公明党の山口那津男代表は2日の記者会見で「この参院選で(改憲を)争点にするには時間も、国民の意識も十分に熟していない」と批判した。 みんなの党の渡辺喜美代表は「そのレトリック(修辞法)を聞いて、思わず後ずさりした」、「別々の政党でやっていく方が、これからの政界再編にとってはいい気がする」と合流を否定した。最高裁は2011年3月、最大格差2.30倍だった09年衆院選を「違憲状態」と判断し、一人別枠方式が格差の主因だとして廃止を求めた。これを受け、昨年11月、同方式の廃止と小選挙区の定数を「0増5減」とする選挙制度改革関連法が成立したが、区割りは見直さないまま翌月の選挙に突入した。

 これに対し、全国14の高裁・高裁支部に一斉に計17件(うち比例代表1件)の行政訴訟が提訴され、各高裁は14件の「違憲」等判決を出した。中には「選挙無効」の判断もあった。 今回の判決の多くで「合理性のない一人別枠方式を維持したまま行われ、格差がさらに拡大した」ことや「最高裁判決から選挙まで1年9カ月の期間があった」ことが触れられ、「強い警鐘が鳴らされたにもかかわらず、是正が早急に行われないまま選挙が行われた経過は看過できない」と、最高裁判決の違憲状態よりも、さらに踏み込んで違憲と判断されている。

 しかるに現在も、選挙制度改革に向けた与野党の溝は縮まっていない。与党が「一票の不平等」問題で小選挙区定数を「0増5減」する関連法案の早期成立を目指せば、野党は制度自体の抜本改革を要求し、主張は平行線のままである。いわゆる「事情判決の法理」から最高裁で無効判決が出る可能性は少ないが、最高裁で「違憲」が確定するだけでも、確定判決の趣旨に従って、国会に法改正の義務が発生する。貴重な先例になろう。 とくに正規の手続きによらない改憲論者は今後の経過を注目すべきであろう。(おわり)
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